「(任侠ものの映画出演も多かったが)私は平和主義者。誰かの足を引っ張ったり、批判したりすることが好きではないので性格的に政治家向きではないのかもしれません。ただ、これまで自分の人生にターニングポイントがいくつかありましたが、1度も逃げたことはなかった。最終的には自分の判断で手を下げましたが、そこには党(東京新党16)や陣営の考えがあることも理解していただきたい。
こういう決断になって当然、頭が真っ白になり気持ちを切り替えないといけないと思いましたが、完全に切り替わらないまま今日を迎えました。今後のことは何も決まっていません。芸能界は出馬を取りやめたからといって、すぐに戻れる簡単な世界ではないので、すべては選挙が終わってから、ゆっくり考えたいと思っています」
会見での発言について、大沢さんは所属する東京新党16の大野公寿代表から用意された原稿があったものの、自分の言葉で伝えたいと自ら手書きで原稿を用意したことも明かした。
「古い人間なんでパソコンで打った文字よりも自分で書いた方が頭に入ってくるんです(笑)。(政治の)経験がないので、わからないことも多い。ただ、わからないことは素直に聞けばいいですし、恥ずかしいことではないじゃないですか」
大沢さんが元ジャニーズのアイドルだったということで、通常の区長選の域を超えて、様々な報道がされてきた。先のインタビューでは、こんな胸のうちも見せていた。
「ジャニーさんなら“よくぞ決意してくれた”と言ってくれると思いますよ、もうジャニーズをやめてからの人生の方が長いんですけどね。自分的には一般の候補者として出馬表明をさせていただいたつもりです。ただ、タレント候補としてみられるのは仕方がない。それがハンデだとしたら自分自身でひっくり返していくしかないですから」
バイブルは数年前に駅のホームのキヨスクで買った『田中角栄 100の言葉』(宝島社新書)だという。
「どの業種の仕事にも当てはまる名言集。区長という目標に邁進しているなかでは、『大臣室の扉はいつでも開けておく』という言葉は響きました。もし自分が、そうなったときにはそうしていたいというか。とにかく北区が大好きですし、みなさんが笑って生活できる舞台作りがしたいんですよね」
出馬を断念する大沢さんの表情からは悔しさもうかがえた。だが、ひとつひとつの言葉に嘘はなかったように思う。
取材・文/栗原正夫 撮影/井上たろう(会見以外)