股間を触られ、キス、さらには…
――性暴力を受けるようになったきっかけは?
中学1年の2学期のことでした。担任で所属していたバレー部の顧問でもあった先生から股間を触られたんです。そのうち、キスされるようになって、最終的にはフェラチオまでされるようになりました。
――抵抗できなかった?
股間を触るのをやめてと言うと、『オレの言うことを聞けないのならクラスを出て行け、バレー部の練習も参加させない』と凄まれてしまって。やさしいと思っていた先生がいきなりそんな風に豹変し、パニックになって、どうしたらいいかわからなくなってしまったんです。
――周囲に助けを求めることもできなかった?
放課後に1時間くらい残されて、友だちの悪口を無理やり言わされるんです。それで早く帰りたい一心から『〇〇君にはこんな問題がある』と話すと、今度はその生徒を呼び出して『栗栖がお前の行動に問題があると言ってるぞ』と告げ口する。当然、その友人と私はギクシャクした関係になりますよね。そうして私を孤立させ、助けを求められないような状況に追い込むんです。
束縛もすごかった。毎朝のホームルームでふたりにしかわからない『愛のサイン』を要求するんです。あと、付き合う友人や話をしてもいい教員もすべて指定されました。要するに『オレに反感を抱く生徒や教員とは口をきくな』ということなんです。まるで監視されているようで、毎日が苦痛でした。
学校を休むと自宅に押しかけ、玄関をバンバン叩く
――休学や転校は考えなかった?
一度だけ転校したいと洩らしたことがありました。すると、移ったら転校先の先生を通じて嫌がらせをしてやるとか、おまえが同性愛者だとばらしてやるとか脅されてできませんでした。
学校を長く休んだ時も自宅にやってきてチャイムをしつこく鳴らされました。電池を抜いて音が鳴らないようにしても、玄関をバンバンと叩いて帰ろうとしない。最後は母親も怖がってドアを開けてしまい、学校に連れ戻されてしまったんです。
2年生の時には横浜の叔母の家に逃げ込んだこともありました。その時も母を脅して私の行く先を聞き出して、その日のうちに横浜までやって来て身柄を確保されてしまいました。
――その先生には加害意識はなかった?
自分が生徒にひどいことをしているという認識はなかったと思います。とにかく異常な先生でしたから。相手からしたら、僕は人間ではなく、ただのモノだったんだと思います。だから、僕の将来がどうなろうと関係ないし、モノだから自分の悪行が明るみになることはないと考えていたようなフシがありました。
――結局、だれからも救いの手はさしのべられなかったんですね。
ええ。先生に知られないように学年主任や他のクラスの教員にこっそりと被害を訴えたこともあったんですけど、『そんなことをする先生じゃない』とか、ひどい人だと『おまえらお似合いかもな』などと、適当にいなされてしまいました。
その先生は教職員内での評判が悪かったので、他の先生たちも関わることを恐れて見て見ぬふりしていたのかもしれません。
――聞けば、校長や教頭にも直訴したことがあったとか?
2年生の時に、職員室に泣いて行ったことがあったんです。そこで泣きじゃくりながら、『〇〇先生からキスされました。フェラチオもされました』と訴えました。だけど、教員室全体がシーンと凍りついただけで、その場に居合わせた校長も教頭も何もしてくれませんでした。