タダ働きに駆り出される短大生たちも…

そして年度替わり。この時期の保育士は大忙し。
卒園と入園と進級の準備を同時進行でおこなうだけでなく、3月末で退職する保育士がいれば、新規採用される保育士に引き継ぐ作業もある。

また、保育の現場は、既製品やお名前プリントシートの利用も広がっているが、園の方針によっては「手書き、手作り」が求められることもまだまだ多い。手作りとなれば作業量は増える。就業時間中では終わらず持ち帰りで仕事をさせられているのに、残業手当がつかないことも少なくはないのだ。

この状況をカバーするために、短大等を卒業予定の新卒採用の学生がタダ働きに駆り出されるケースがある。学生たちは「新人研修」の名目で、保育の補助や園内の掃除、整理だけでなく入園児や進級児のための物品製作なども求められる。園児が百人規模の園となれば大仕事だが、このような作業に最低賃金すら出さない園もある。

〈感動の保育園卒園式の舞台ウラ〉「捨てられない」…保育士に大量に届く“名前入り湯呑み”や“手作り作品”。おじさんバンドと深夜まで練習のお付き合い…新卒採用学生は“新人研修”という名のお手伝い_3
※写真はイメージです
すべての画像を見る

短大生は卒業の直前まで学業に追われていることも多いのに、さらに保育園の仕事を手伝うように求めるのは、非常識と言わざるを得ない。そんな職場には入るべきではないのかもしれないが、内定を蹴って別の園に就職することは時期的に難しい。
中部地方の保育士養成校の50代の男性教員は「釣った魚にエサをやらないようなものですね」と筆者に苦々しく語った。

保育の現場は保育士あってこそ。その待遇の改善が園児の笑顔につながるのではないか。卒園、入園を控えるこの時期に、国や保育園関係者は改めてそのことについて真剣に考えてほしい。

取材・文/大川えみる
集英社オンライン編集部ニュース班