定価が安く出荷数も多くて利益にならない
「『水星の魔女』に関しては、首尾よく転売できても時給換算したら数百円ほどの儲けしか出ない。そもそもガンプラを買い占めるためには新作ガンプラの販売店を調べ、早朝から長蛇の列に並ばないといけない。手に入れてからは販売サイトに掲載、売買成立後には梱包・発送の費用もかかる。その手間暇と費用を考えたら、『水星の魔女』はまったく割に合わないんです。
にもかかわらず、在庫を抱えるよりはマシと、苦労して仕入れたガンプラを安値で投げ売りする転売ヤーが続出しています。かなり厳しい状況です」
この転売ヤーによると、ガンプラクラスの有力な転売アイテムでも一定の利潤をあげるためにはいくつかの条件があるという。
「ひとつは定価が高いこと。高額な分、転売差益も大きくなります。もうひとつは出荷数が少ないこと。希少価値があるからこそ、取引価格も高騰しやすい。
その点、『水星の魔女』関連のガンプラは定価が1000~2000円ほどと安い。しかも製造元のバンダイが売れると判断したのか、出荷数もかなり多く、転売差益は微々たるもの。販売サイトへの手数料や梱包などのコストを考えると転売ヤーにはいくらも利益は残らない。これならアルバイトの時給のほうがずっとマシです(苦笑)」
転売ヤーもバカではないはずだが、なぜそもそも転売差益の見込めない『水星の魔女』ガンプラに資金と労力をつぎ込むような計算違いをおかしたのだろうか。
「出荷数だけでなく、再販の頻度も多かったのだと思います。人気のガンプラが発売されるたびに、バンダイには再販などの転売対策をしてほしいという消費者の声が寄せられていましたから。
『水星の魔女』に関しては購入希望者がガンプラを定価で買えるよう、バンダイが本気を出したということなのでしょう」
多くの転売ヤーが転売差益の低い『水星の魔女』関連ガンプラに手を出してしまったのは、海外にコネを持つベテラン転売ヤーの爆買いに煽られてしまったためという指摘も。前出の転売ヤーが続ける。
「中国、ドバイ、ハワイなどでもガンプラ人気は高い。こうした海外需要を狙って、現地にガンプラを流せるようなコネのある一部のベテラン転売ヤーが大量に買い占めた。その爆買いぶりを見て、他の転売ヤーが自分たちも大儲けできると勘違いし、十分な損益計算もせずに『水星の魔女』のガンプラ買いに走ってしまったというわけです」