ブラッド・ピットのさりげない優しさに感動
終わった! 出番は終わりだ。セットを去ろうとすると腕をつかまれた。ブラッド・ピットだった。
「ありがとう! よかったよ、よくやってくれた!」
それを聞いてどんなに感動したか。この言動こそブラッドの人となりを表していると思う。現場にいるものみんなが、「自分の仕事は大切だ」、「認められている」と思えるように尽力してくれるのだ。
この日はほかのキャストにも会った。
華麗なドレスをまとった、主演女優のマーゴット・ロビーや、女性記者エリノア・セント・ジョンを演じたジーン・スマートなど。彼女たちにはプライベートルームがあったので、共演シーンの見学にとどまったが、そのほかの俳優とセリフのあるエキストラは、2階のアトリウムを共同楽屋としており、マニー役のディエゴ・カルヴァとは待ち時間に大いにおしゃべりした。話しやすく、気持ちのいい青年だった。
ディエゴはメキシコシティ出身、これまで、ハリウッドで主要な役柄についたことがない。だが、『バビロン』は実はマニーに始まりマニーに終わる物語で、陰の主役ともいうべき存在だ。それを演じた将来有望なディエゴと私の人生の道が、この日たまたま交わった。
生涯忘れられない、驚くべき体験の詰まった一日だった。
私の体験は、前述のエリノアが劇中でジャック(ブラッド)に伝える言葉に集約されると思う。
「100年も経てばあなたも私もとっくに死んじゃってるけど、出演作を見る観客がいれば、あなたはいつでも生き返るのよ」
私もまたブラッド・ピットのシーンの中に生き返る。
『バビロン』は、いつまでも見返されるであろう傑作映画だ。私は、関係者試写も含めてもう3回見た。どうぞご自身の目で見てみてほしい。映像も音響も優れた素晴らしい劇場で、監督のヴィジョンを体験できますように。
パーティシーンに登場するゲストのひとりを演じた、ジム・オブライエンも探してみてください。
文/ジム・オブライエン
『バビロン』(2022)Babylon 上映時間:3時間9分/アメリカ
1920年代のハリウッドは、すべての夢が叶う場所。サイレント映画の大スター、ジャック(ブラッド・ピット)は毎晩開かれる映画業界の豪華なパーティの主役だ。会場では大スターを夢見る、新人女優ネリー(マーゴット・ロビー)と、映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)が、運命的な出会いを果たし、心を通わせる。恐れ知らずで奔放なネリーは、特別な輝きで周囲を魅了し、スターへの道を駆け上がっていく。マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出す。しかし時は、サイレント映画からトーキーへと移り変わる激動の時代。映画界の革命は大きな波となり、それぞれの運命を巻き込んでいく。果たして3人の夢が迎える結末は……?
公開中
配給:東和ピクチャーズ
公式サイト:https://babylon-movie.jp
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