ブラッド・ピットの肩をどつくハプニングも!
ブラッド・ピットが入ってきたときには、ただ衝撃を受けた。「うわ! 映画スターだ!」
時代がかったタキシード、それにあわせたヘアメイク。何もかもが完璧で、自然でクールで、バランスがとれている。これぞ徹頭徹尾、映画スターというものだ。
『バビロン』でブラッド・ピットは、約100年前、1920年代のサイレント映画黄金期のスーパースター、ジャック・コンラッドを演じている。私が出演するシーンでは、4人のハリウッドの大物たちがジャックに絡む。その4役のオーディションを受けたわけだが、獲得したのは、別の男と話しているジャックのもとへ歩いて行って、話しかける役だ。
私は、過去にジャックと何度か仕事したことのある映画プロデューサーと考えて、役作りをしていた。
スタンドイン(俳優の代理)を使っての長時間のセット調整が終わると、ブラッドに紹介された。鷹揚に対応してくれたので、とても気が楽になり、話をしてみた。「近づいていったら、あなたの肩をつかんで注意を引きたいと思うんですが、いいかな?」。にっこりと「いいさ」と言ってくれた。
カメラを回すのは、これまたアカデミー受賞撮影監督のライナス・サンドグレン、監督はもちろんデイミアン・チャゼルだ。小物のカクテルを渡されるも味見はせず、役の見た目にふさわしく煙草に火をつけた。と、監督が現れて自己紹介し、撮影が始まった。何度かテストをしたあと、監督に言われた。
「フレームに入ったら、手をのばしてブラッドの肩をつかんでほしいな」
「そうします」
「やってみて」
監督も私も同じく、肩をつかむのがいいと思ったわけだ。ブラッド・ピットの肩をだよ!
1度はちょっとつまずいて、ブラッドの肩をどつくかたちになってしまった!
彼は「ちょっとオマケがついたね」と微笑んでくれる。監督が割って入って、肩のたたき方とか、セリフについて、さらにフレームアウトの指示をする。そのとおりにやったシーンが採用された。