創業家なきルノアールのブランド価値を守り続ける
来年には創業60年を迎えるルノアール。
今後の展望について、猪狩氏は「短期的にはコロナ脱却を念頭に置きながらも、これまでとは違う視点から業態のブラッシュアップに取り組んでいきたい」と抱負を述べる。
「喫茶室ルノアールのブランドを守り、事業を拡大させていくためには、収益性の追求が鍵を握ると考えています。首都圏の地価は年々高くなっており、現状の客単価800~850円ほどでは厳しくなってきていることもあり、客単価を上げるような取り組みも必然的に求められることになるでしょう。
喫茶室ルノアールよりもアッパーな業態開発なのか、あるいは既存のブランドポートフォリオを見直して統合させるものなのかなど、あらゆる可能性を模索し、最善の選択を図って見極めていきたいと思います」
2022年9月からは、前社長の体調不良によって急遽、陣頭指揮を握ることになった猪狩氏。
「創業者の作った会社を劣化させたくない」
こうした強い思いを胸に秘めながら、社長としての手腕を振るっているそうだ。
「創業一家による経営ではなくなった今、自分が責任を背負い、ルノアールの未来を切り拓いていく。そのような覚悟を持って取り組んでいます。『商品を出さない経営』という創業の考えやリーダーシップが、すごく励みになっているので、これからも会社の歴史に恥じぬよう、精一杯研鑽を積んでいきたいですね」
取材・文/古田島大介 写真提供/銀座ルノアール