待ち合わせと言えば「アマンド」の由来
アマンドは今年で創業76周年を迎えた。まさに日本の喫茶文化のパイオニアとして、長年親しまれてきた喫茶店のひとつと言えるだろう。とりわけ、「待ち合わせといえば『アマンド』」というフレーズが馴染み深く、一度は耳にしたことがあるはずだ。
このように言われるようになった所以について、勝俣氏は「お店から謳ったのではなく、自然発生的にそう呼ばれるようになった」と話す。
「渋谷には待ち合わせのランドマークとして最適なハチ公があります。でも、六本木にはシンボルとなるものがないんですよ。そんななかで、交差点近くにド派手なピンク色の外観をしたアマンドがあった(笑)。
ハチ公と違って、店内でお茶をしながら待ち合わせできるのが大きなメリットでした。また、電話の取り次ぎも可能なので、待ちぼうけせずに安心して人を待てる利点が徐々に浸透していき、待ち合わせといえば『アマンド』といつしか言われるようになったと思っています」
通称“アマンドピンク”と呼ばれる色を基調とした喫茶店にしたのは、「戦後復興の中で、明るい気持ちになってほしい」という創業者の思いがルーツになっているという。
メルヘンチックな雰囲気と本格的な洋菓子を楽しめる喫茶店として、創業当初からトレンドの先駆けを行く存在だった。今では、喫茶店やカフェに行くと当たり前のように提供されるおしぼり。これも実はアマンドが始めたサービスだと言われている。
そのほかにも、お店にパラソルを置いたり絵画を飾ったりするなどの斬新な取り組みを行い、“アマンドスタイル”と言われるようになっていったのだ。
そんなアマンドの代表的ロングセラーが「リングシュー」である。
リング型のシューの中にカスタードと生クリームを挟む斬新なアイデアの商品は、女性を中心に「美味しい」と評判に。
さらに、女性が手を汚さずに食べられるようにナイフとフォークが添えられるという、細かな心遣いもリングシューの名を広めた要因になっている。