タバコ分煙、Wi-Fi…時代とともに変化する喫茶店

コロナ禍で年間35億円の売上減を乗り越えて…ルノアール一筋50年のベテラン社長が今も忘れない創業者の衝撃的な教え「店は出すけど、商品は出さない」とは_10
コロナ禍で個人で利用できるビジネスブースを併設した店舗も増えた

また、ルノアールは2020年4月から紙巻きたばこの喫煙を禁止し、喫煙スペースを設置することで分煙を進めている。

かつてはサラリーマンが集い、新聞片手に一服する姿がお馴染みだったものの、時代の流れとともに煙草を吸う人も吸わない人も、どちらも快適に過ごせるような店舗づくりにシフトしてきたという。

「2016年以降、店舗の雰囲気を昭和モダン調に変え、メニューのバリエーションも拡充したことで、女性のお客様も増えてきました。さらに分煙に力を入れたことで、現在のお客様における男女の割合は7:3くらいになっています。とはいえ、ルノアールを支えてくれた愛煙家の要望にも応えるべく、喫煙ブースの中に紙巻タバコが吸えるボックスを設置している店舗もあります」

そして直近では、ビジネスユースを中心としたテレワーク需要で充電やWi-Fiの利用も多い。猪狩氏は、ルノアールがネット接続のサービスを導入した意外な実話を話してくれた。

「実を言うと、1990年代にソフトバンクの孫正義さんが、当時のルノアールの本社があった高円寺で、無料のルーターを配っていた時期があったんです。今でも覚えていますが、孫さんが直々に本社へお越しになり、ほんの10分~20分くらいでネット環境を無料で整えてくださいました。もし、費用が発生したら、今頃ルノアールでは充電やWi-Fiのサービスはやっていなかったかもしれない。本当に孫さんには心から感謝したいと思っています」