前歯3本折られても心は折れず…
――しかし、大怪我をしてしまった……。
あの瞬間、痛みよりも、メンタルが落ち込むよりもなによりも、あの姿でリングを降りなきゃいけないっていう悔しさですよね。映像では抜かれてたし、会場にいる人もサーっと引いた空気を感じた。かつ顔もボロボロになってて、その姿で降りなきゃいけないのが悔しすぎて。
“可哀想”という状態でリングを降りるのが、わたし的には許せなかったので、死にもの狂いでマイクを掴んで喋りました。
対戦相手からの「白川未奈、この白いベルト希望だった? 絶望だった?」との問いかけに、
「絶望の血の味がするよ。歯も希望もどこか取れちゃった。でもこの火は絶対に消えないから地獄から這い上がってやるよ」(白川リングマイク)
――あそこで喋れるのが、白川未奈だなという感じはします。
あそこで喋る以外の選択肢はなくて。レフェリーストップは賢明な判断だったと思うんですけど、わたしは正直、まだ闘う気力があった。わたしは(3カウントの前に)返してるので。意識があったし、闘う意志もあったんです。自分は闘いたい。でも終わった。お客さんは冷めている。上谷は勝って、「どうだった?」って聞いてくる。あそこで無言で帰ったら、結局すべて上谷の勝ちになる。それは許せなかったので。そういうところも勝負だなと思いますね。
――歯がボロボロに折れてしまって……自分の歯だったんですよね?
そうです。前歯3本、神経が死んじゃって。でも、(中野)たむがリングに落ちた歯を拾っててくれたので、もしあれがなかったら仮歯を差し込まなきゃいけなかった。
――いやあ、自分の歯が折れるというのは、本当にショックだと思うんですよ……。欠場中はどんな思いで過ごされましたか?
とにかく悔しいっていうのと、あとは怪我のイメージがつくのがすごくイヤでしたね。前の欠場(2020年12月)から大きい怪我もなくて、コンディションはずっとよかったので。なのに、すごく大きい怪我をしちゃったので、「怪我のイメージつくじゃん……」みたいな。それってすごくレスラーにとってマイナスかなぁと。怪我は付き物なんですけど。