「リップモンスター」まさに怪物級ヒットの秘密は「SNS戦略」
コロナ禍でメイク用品が売れなくなってしまったなか、特に売上が激減したのが「口紅」だった。マスクをつけることによって口紅をつける必要性がなくなったことや、マスクに口紅が付くのがいやという理由で塗る人が減少したのが理由だ。
にもかかわらずKATEはメイク市場で業績を伸ばしている。その栄光を支えた商品のひとつが2021年5月に発売された口紅「リップモンスター」だった。
「『マスクをしていてもメイクを楽しみたい』といったユーザーからの声がたくさんありました。このような時代だからこそKATEらしい意思のある提案が人の心を動かすのではと思い、KATE史上最も落ちにくい口紅を作ろうと思いました」
開発途中は社内から「コロナ禍で口紅を発売しても売れないのでは?」という声も出たが、それを納得させる商品を開発することができ、結果は累計販売本数が発売から約1年半で550万本突破する大ヒット。KATE史上初の口紅シェアNo.1を獲得した。
このリップモンスターが人気となった理由には怪物級の落ちにくさや見た目の可愛さだけでなく、徹底したSNS戦略があった。
KATEは口紅の知名度を上げるべく、TikTokで有名インフルエンサーを起用し、エフェクト機能を楽しみながら真似できる「体感参加型動画」を公開。また、発売前には公式YouTube「KATE CHANNEL」で開発秘話を公開するなど、SNSをフル活用した宣伝に力を注いだ。
結果、ステイホームやソーシャルディスタンスを確保しながら使用できる楽しみ方を発信することで、SNSユーザーの多い若者を中心に商品を広めることに成功する。
こうした、オンライン上でメイクを発信するという楽しみ方を提案し「コロナ禍だから化粧品が売れない」という既成概念を打ち砕いた商品戦略は、「NO MORE RULES.」を掲げるKATEだからこそ実現できたのかもしれない。
若井さんは「これからも人々のメイク欲を刺激し、揺さぶるような商品を作っていき、どんな人でも一歩踏み出せるようなブランドを目指していきたい」と話す。
時代がさらに多様性に溢れ、またSNSがインフラとしてこれまで以上に普及していくなか、KATEはどのような商品を発売していくのだろうか。今後のブランド展開がますます楽しみだ。
取材・文/越前与