90年代を象徴するロマコメ映画の豊作ぶり
1998年の表紙をみると、『タイタニック』を含め、恋愛映画の主役たちばかりであることに気づく。
11月号表紙のメグ・ライアンは、ロマンティック・コメディの女王だ。ノーラ・エフロンが脚本を執筆した傑作『恋人たちの予感』(1989)でその才能を発揮すると、その後、エフロン監督のヒット作『めぐり逢えたら』(1993)『ユー・ガット・メール』(1998)に出演。いずれもトム・ハンクスと共演している。
10月号のキャメロン・ディアスは初登場。『マスク』(1994)のヒロインに抜擢されたのをきっかけに、『フィーリング・ミネソタ』(1996)『ベスト・フレンズ・ウェディング』(1997)『普通じゃない』(1997)といった恋愛映画でステップアップしてきた。そして、ファレリー兄弟監督のお下劣コメディ『メリーにくびったけ』(1998)でトップ女優の仲間入りを果たすことになる。
9月号のイーサン・ホークも表紙に初登場だ。『いまを生きる』(1989)で注目された彼は、『リアリティ・バイツ』(1994)でウィノナ・ライダーらとともにX世代を代表する役者となった。
その後も、SFドラマ『ガタカ』(1997)や小説執筆など活動は多岐にわたるが、彼のライフワークは『恋人までの距離(ディスタンス)』(1995/原題『Before Sunrise』)からはじまった、『ビフォア』シリーズだろう。
ジェシー(ホーク)とセリーヌ(ジュリー・デルピー)の恋模様をリアルタイム進行で描く意欲作は、『ビフォア・サンセット』(2004)『ビフォア・ミッドナイト』(2013)と続いている。そろそろ第4弾が見たいこころだ。
ハリウッド映画がアクション大作だらけになったいまとなっては、恋愛映画が人気ジャンルとして確立されていた90年代がとても懐かしい。
最新作『チケット・トゥ・パラダイス』(2022)でジョージ・クルーニーと共演したジュリア・ロバーツも、「90年代に大量に作られたロマコメ映画を当時の私たちはきちんと評価していなかったと思う」とニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで答えている。
一世を風靡したミュージカル映画がほとんど絶滅してしまったように、ロマコメ映画も消え去る運命にあるのだろうか?
◆表紙リスト◆
1月号/ハリソン・フォード 2月号/レオナルド・ディカプリオ&ケイト・ウィンスレット※後者のみ初登場 3月号/ブラッド・ピット 4月号/レオナルド・ディカプリオ 5月号/キアヌ・リーヴス 6月号/クレア・デインズ 7月号/レオナルド・ディカプリオ 8月号/レオナルド・ディカプリオ 9月号/イーサン・ホーク※初登場 10月号/キャメロン・ディアス※初登場 11月号/メグ・ライアン 12月号/ブラッド・ピット
表紙クレジット ©ロードショー1998年/集英社