マチルダのセリフに現代の若者が共感

ある日アパートで、「大人になっても人生はつらい?」とマチルダはレオンに質問する。
レオンは少し考えてから「つらいさ」と答える。
短い会話ながらもふたりのフィーリングが合う瞬間であり、印象的なシーンのひとつだ。

「大人になっても人生はつらい?」時代を超えて共感を集める、名作映画『レオン』の人生哲学_2
話題になったARフィルター
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時は流れて2019年〜2020年頃、Instagramのフィルター機能で「大人になっても人生はつらい?」という字幕のARフィルターが若者世代を中心にトレンドとなっていた時期があった。
現代を生きる若者も、先行きが見通せず将来に不安を覚え、このセリフをつぶやきたくなるのだ。

フィルターを作ったのはARクリエイターのキダハルマ(20歳)。
当時のことを聞いてみると、なんと本人は一度も『レオン』を見たことがなかったとのこと。

Pinterestに埋もれたこの映画のカットを見つけて感覚的に共感し、フィルターを作って投稿したところ、なんと200万以上のインプレッションを記録したという。
 
きっとこのムーブメントにのった同世代もまた、『レオン』を見たことのない人が多いのだろう。
時代はおろか作品の枠までをも超えて、マチルダのセリフには共感が集まっているのだ。

唯一の相棒だった観葉植物を「俺と一緒で、根がない」と語るレオンに対し、マチルダは「大地に植えれば根を張るわ」と答える。

そして大地に根を張って生きたいというレオンの願いは、マチルダの手によってかなえられることになる。

レオンとマチルダの会話には、今の時代の人々にも共感できる純情な人生哲学が詰まっているのかもしれない。

文/桂枝之進

『レオン』(1994)Leon 上映時間:1時間51分/フランス・アメリカ

悪徳警官(ゲイリー・オールドマン)に家族を殺され、隣に住む殺し屋のレオン(ジャン・レノ)に助けを求めた12歳のマチルダ(ナタリー・ポートマン)は、復讐を決意する。やがてふたりの間には、年齢も境遇も超えた心のつながりが生まれ……。リュック・ベッソン監督のハリウッドデビュー作。