落語の真打を目指した父と娘

主人公・あかねは、落語界をけん引する存在である阿良川一門のナンバー2、阿良川志ぐまに弟子入りする。彼女はこっそり11歳から6年に渡り、志ぐまに落語の稽古をつけてもらってきたのだ。秘密の稽古が露見した日、あかねはいきなり落語喫茶の寄席に出ることになる。

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落語とは一人喋りではなく一人演劇である。演目の登場人物からナレーションまでのすべてを、表情、仕草、声色を駆使して一人で演じる。“その場にいない者たちの会話”を見せ、そのやりとりで笑いをとるのだ。

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「初めっから何でもできるヤツなんていねぇ」そういわれた彼女だったが、見事に初高座を爆笑で飾る。実は彼女の落語のキャリアは6年ではなかった。子どものころのあかねは、父親である阿良川志ん太こと、徹(とおる)の落語が大好きで、いつも稽古をのぞいては真似をしていたのだ。

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徹は落語家の階級でいうと「二ツ目」だ。阿良川志ぐまの一番弟子で、素質はあるのだが、落語家の最高位「真打」には手が届かなかった。

それでも「苦労をかけている妻子のために今度こそ」と意気込み、真打昇進試験に臨んだ。そこで徹は自身最高の一席を披露。会場の客や阿良川流の師匠たちは皆、徹の真打昇進を疑わなかったが、その日、昇進試験を受けた5人は誰一人真打になれなかった。

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なぜなら一門のトップ、阿良川一生(いっしょう)が徹を含む全員を破門にしたからだ。破門とは単に試験不合格ではなく、阿良川流からの追放を意味していた。その理由は明かされていない。落語業界以外にも広く知られることになったこの「破門騒動」後、あかねはある決心をする。

阿良川一門の真打になる
真打になっておっ父の芸はスゴかったって事を
みんなに………あの男に
私が証明する。

こうして女性落語家・あかねによる仇討ちの物語が始まった。「花見の仇討ち」や「宿屋の仇討ち」のサゲになる作り言ではなく、文字通りの意味だ。阿良川一生の鼻を明かし、自分が好きだった父と父の落語の尊厳を取り戻すのだ。