ツアーが終わったら「まず消えたいですね(笑)。世の中から」

――パーソナルに音楽を作る自分と、受け手にとっての大黒摩季のあり方に向き合ってきたんですね。

この30周年アルバムのジャケット写真も、その発想で作ったんです。スパンコールのドレスのほうは、暗い世の中にひとり光を放つゴールドミューズ。黒いドレスのほうは、世の中が明るい時に心に闇を抱えてる人を抱き留めるブラックミューズ。

常に「四の五の言わずについてきな!」って引っ張ってくれる存在と、私のようにぶきっちょで、取り残されがちな人たちを抱きしめてくれる存在、どちらも描きたいなと思ったんです。このふたりは最終的に私が目指す人ですね。私の中に、夜明けに地球の裏側まで沈むじゃないかってぐらい落ち込む暗くて怖がりなA子と、クリエイターのB子がいるんです。落ち込んでいるときに書いた曲には、A子が出てるんですよ。

でも、レコーディングで冷静に聞くと、暗すぎる(笑)。そうしたらB子が出てきて、「こっちですよ」っていう一行を入れるんですよね。その言葉がたとえば、『夏が来る』なんです。あの歌の主人公は、周りにも呆れられちゃって、それでも私は本当の愛を見つけるの!とか言っている痛い女で。だけど「春が来る」じゃなくて「夏が来る」って言った瞬間に、それが怨念じゃなくて、キラっとした、ちょっと格好のいいものに見える。

『別れましょう私から消えましょうあなたから』だって、奪われて家政婦のように扱われてつらいところに最後、B子が「マイナスだらけの未来はいらない」と入れる。だから前向きに別れるんでしょう?って。私、ひとりになりたくて電源全部オフって、誰にも連絡しない日とかあるんですよ(笑)。ほんとに、よくぞ私みたいなタイプが30年もやれたもんだなって、俯瞰してる自分がいます。

病気で引退を覚悟したときに吉川晃司に救われた一言「お前はさびない女だから大丈夫だよ」と―大黒摩季の歌が色あせない理由_3
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――ツアーは2023年春まで続きますが、このツアーが終わったら次にやりたいことはありますか?

まず消えたいですね(笑)。世の中から。

――え! 消えないでほしいです(笑)。

今、ツアーもしてアルバムも出して、テレビにも出て、大バーゲンですから(笑)。もう皆さん、私のこと知りたくなくなっちゃいますよ! 今、書きたいものがいっぱいあって。病気療養や介護の経験を活かして、皆さんが得する情報を提供してあげたいんです。それを書くために2ヵ月くらい海外に行きたいですけど、周りからもう次のツアーを期待されているし、どうなるかわからないですね(笑)。

取材・文/川辺美希

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