相手が男子でもスタート時点で
ポジションを取れれば勝てると思った
––––そんな“アーム漬け”の努力が実り、今年ついに全日本チャンピオンの座を獲得したのですが。まず、男子の部に女子がエントリーできることに驚きました。
正確に言うと「AJAF全日本大会の男子A2 −60kg級右(手)優勝」になるんですけど、2年前にエントリーしようとした時は一回断られたんです。女子はダメだって。でも今回もう一回申し込んだらなぜか女性もエントリーできるってことで、ようやく挑戦できたんです。
※AJAFは国内二大団体の1つ。「男子A2」は、「男子A1」に次ぐ上から2番目のクラス。
––––あえて男子の部に挑戦したのは女子の部ではもう敵がいなかったから?
私の目標は世界チャンピオンで、海外にはもちろん強い女子がたくさんいるんですけど、コロナの影響で海外試合をする機会が作りづらくなっていて。その状況の中で世界に通用する選手になるには、国内で男子とやるしかないと思ったんです。
それにこれまでもAJAF全日本以外の大会では男子の部にも出ていて。そういうとこって体重無差別しかないビギナーズクラスが多くて、対戦相手が初心者とはいえ100キロとかの男子と対戦しないといけないんですね。それでも勝っていたので体重別のAJAF全日本ならどうにかなるかなと。表彰台ぐらいは狙えると思っていました。
––––実際、優勝したわけですが勝因はなんだと思います?
基本的にフォームでしょうね。私は握りにはすごい自信があって、そのためのトレーニングもしてきました。
腕の長さ(長いと有利と言われている)とか力以前の問題として、握りの時点で勝っていればほぼいけるなと。競技中に変なところに力が入ったりしない限りは大丈夫だろうなって思っていました。
––––「握りに自信がある」っていうのは握力が強いということ?
握力もあるけど、それだけじゃない。相手と手を握ったときに自分の当てたいところ、指の掛かり方とか手の平の位置とかいろいろあるんですけど、そういう勝つために譲れないポジション、自分のパワーポイントをどう作れるかってことが大事で。
そこの感触を見極めるのは難しいんですけど、最初にそのポジションを取れれば私は相手がどう動かそうしても絶対に離さない。だからスタートの握りさえしっかりできれば勝てるっていう自信があったんですよ。
しかも、今回の決勝の相手には一度予選で負けていて。私は敗者復活から上がっての対戦だったから、おそらく相手はまた勝てると思ってたんじゃないかと。試合を見ている人達もみんな私が負けると思っていて、そこで最初の1本を返せたので、私自身すごいテンションが上がってしまった。その流れのまま2本目も行けたので勝った瞬間は「やってやった!」ぐらいの気持ちでした(笑)。