アクション以外の作品にもチャレンジ

もちろん、ポールはそのほかの作品にもチャレンジしている。

海底に沈んだ金塊の争奪戦を描いた『イントゥ・ザ・ブルー』(2005)では、ダイビングテクニックと締まった肉体美を披露。エメラルドブルーの海にポールの蒼い瞳が生えて、なんとも眼福!

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『イン・トゥ・ザ・ブルー』では、財宝を積んだ沈没船を見つけることを夢見る主人公のジャレットを演じた
ZUMA Press/amanaimages

また、翌年には、日本映画をフランク・マーシャル監督が再映画化したアメリカ版『南極物語』(2006)に出演。じつは、ここでもポールのアスリート並みの身体能力が決め手に。
というのも『イントゥ・ザ・ブルー』で犬と戯れるポールを見たマーシャル監督は「彼なら犬と上手くやれるし、あれだけの体なら厳しい撮影に耐えられる」と思ったそうだ。

その予想通り、フィジカルなトレーニングは一切なしで撮影をクリアしている。邦画では高倉健が演じた主人公だが、健さんとは一味違った“誠実で真っ直ぐな男”を体現している。

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日本の名作をディズニーがリメイクした『南極物語』。全米科学財団の南極基地で働く主人公のジェリーを演じた
Everett Collection/amanaimages

日本とのご縁は続き、クリント・イーストウッド監督が太平洋戦争を日米双方の視点から描いた『硫黄島2部作』の1作目『父親たちの星条旗』(2006)にも出演。硫黄島の擂鉢山に星条旗を打ち立てながら、手違いで他の兵士が掲げたことにされてしまう悲運の兵士ハンク・ハンセン役を演じた。

登場シーンはあまり多くはないが、死線を越えて任務を完了した若き兵士の清々しい姿は印象的だった。泥にまみれていても、その美貌は隠せなかったけれど。

その後も、出演を重ねた『ワイルド・スピード』シリーズは、いわばポールのライフワークだったのだと思う。しかし出演6作目の『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2013)の撮影中に事故に遭い、亡くなってしまった。

享年40。

さらに成熟した演技もチャーミングな笑顔も見続けたかったけれど、それも叶わぬ願い。多くの作品の中で生きる姿を、味わい続けていこう。

文/金子裕子