「M-1」3回戦の漫才に見るひとつの変化
――『女芸人の壁』でインタビューされていた芸人さんで、特に印象に残っているインタビューはありますか?
WEB嫌いを公言されていた上沼恵美子さんがインタビューを受けてくださったのは、驚きでした(『女芸人の壁』には未収録)。
2018年M-1後の暴言騒動(とろサーモン久保田とスーパーマラドーナ武智によるインスタライブ)の際に、「西の女帝」という言葉だけが先走りして、誰も彼女の本質や面白さには触れようとしてこなかったので、ぜひインタビューしたいと思っていました。インタビューの様子はぜひ『女芸人の壁』の「上沼恵美子論」をご覧ください(笑)。
――著書の冒頭でも書かれていましたが、初回の山田邦子さんインタビューが2年前。そこからさらに社会全体の中での女性の立ち位置は変わってきていると感じます。そんな中で、「女芸人」をとりまく環境も変わってきているのでしょうか?
対談でAマッソの加納愛子さんに「これからもっと女芸人が生きやすい時代になってくるはずで、だからこそこの本に意味がある」という趣旨のことをおっしゃっていただいたのですが、確かに上沼恵美子さんや山田邦子さんの時代と今を比べたら、信じられないくらいの変化があると思います。
女性芸人自体の数が増えたことと、ジェンダーの平等への意識が一般的になっていったこと、あとはテレビが唯一絶対のメディアではなくなったこと……要因はいくつもあると思っているのですが、一番大きいのは女性芸人自身が自分たちで状況や環境を変えようとしているからじゃないかと。
――それはどんなところで感じますか?
今年のM-1の3回戦のネタ動画を見て、すごく思ったんですよね。女あるあるや容姿いじりという壁を女性芸人自身が突破して、彼女たちが否が応でも持たされる「女性性」のカードを上手にコントロールしているなと。
さらに視聴者側のコメントにも変化がある。女性芸人たちの変化につぶさに気づいて、素直にそのおもしろさを楽しんでいる気がして。今まであったある種のバイアスを、我々視聴者も突破している感じがするんです。