チケット即完で満席
今年5月、東京・西新宿のナルゲキ。148席の劇場でこの夜行われたのは「大喜る人たち」という大喜利ライブだ。
ステージ上に椅子が一つ。出演者が入れ替わり立ち替わりこの椅子に座って、大喜利のお題に答えていく。MCを除く出演者17名のうち、7名は趣味として大喜利に参加するアマチュアの大喜利プレイヤー、いわゆる「素人」だ。
けれど2000円のチケットは完売で、自由席のため開場時間から堰(せき)を切ったように観客が集まった。
2018年、小さな会議室での動画収録から始まった「大喜る人たち」。
大喜利のお題ごとに切り取った短い動画をYoutubeなどの動画プラットフォームに公開して徐々に人気を得て、現在はYoutubeチャンネル登録者数約7万人となった。出演者のほとんどが一般には無名の芸人かアマチュアでありながら、多くの動画が数万回再生を数え、有料のライブにもこうして人が集まる。
M-1グランプリ決勝進出で知名度を得る前からこの企画に出演している真空ジェシカ・川北茂澄は、「華はない。回答の面白さだけで戦っている」と評する。単発の短いボケで笑わせる大喜利はただ面白さだけで戦えるのだということを、動画の再生回数の多さが示している。
お題が出ると、ほとんどノータイムで手が上がる。そして、初答から大受け。「すごいなぁ」と感嘆の声が客席から漏れ出る。
回答しているのは決して有名人ではない。それでも満席の会場は異様なほどの熱気に包まれ、爆発するように笑いが起きる。出演者が回答を重ねるごとにその威力がどんどん高まっていく。
こうした大喜利だけのライブは「大喜る人たち」の他にもさまざまな企画が存在し、それぞれに支持者を集めている。アマチュア出演者の名前を冠したライブのチケットが発売即完売したり、東急のイベント公募プログラムによって開催された「大喜利渋谷杯」ではアマチュア出演者が渋谷スクランブル交差点の巨大ビジョンに映し出されたり。
今の大喜利シーンの盛り上がりを説明するとこういうことになるけれど、とにかくよくわからなくても面白い大喜利を、よくわからないままに楽しむ人が増えているというのが現状だろう。盛り上がりの経緯について、「大喜る人たちseason21」終了後のナルゲキで古参の出演者たちに座談会形式で話を聞いた。
座談会メンバーは、芸人の寺田寛明、警備員(ハチカイ)、Yes!アキト、アマチュアの六角電波、ぺるとも、冬の鬼、加えて主催者の小川悠介(なお、シーンの中心的な企画ライブを主催する芸人・寺田寛明には後日、追加の取材を行った)。