変わる「鍵」の概念

――分譲マンションの場合は、入居者以外にも誰かが鍵を持っているのでしょうか。

分譲マンションでは、およそ2000年より前は、マスターキーを管理会社や管理組合が保管していました。しかし、ここ20年で新築された分譲マンションでは、マスターキーそのものを制作しない場合がほとんどです。分譲マンションは賃貸と違って、入居者は「区分所有者」なので、自ら管理をする立場になるからです。

ただし、築年数が古い分譲マンションや、新しくても管理組合の規約で合鍵の提出が義務となっている場合は、マスターキーや合鍵が存在します。中古マンションを購入する際には、鍵についての規約をよく確認しましょう。

――パスワードやカードによるロックも増えています。今後、賃貸住宅の鍵はどうなっていくのでしょうか。

家主側からも、「所有する賃貸住宅の合鍵を持つべきか」ということはよく相談されます。今後は家主も管理会社も、「合鍵やマスターキーは保有しない。鍵は入居者の責任で管理してもらう」というケースが増えていくでしょう。

その理由は、社会のセキュリティへのニーズ、また、部屋で事件や事故があった際には、家主や管理会社が疑われる可能性があることや、鍵の管理業務そのものが大変で、紛失すると高額の費用がかかることなども挙げられます。

これからはこの流れで、賃貸住宅であっても、鍵は使用する個人の責任所有物として認識されるようになるでしょう。

また、将来的にはスマホやパソコンのロック開錠と同じように、顔認証、指紋認証、スマホによる開錠などが一般的になるといわれています。すると物理的な鍵は不要になり、管理責任のありようや、犯罪の手口も形を変えていくことでしょう。

ただし、現状においては、鍵の種類の多様化、高額化などを見すえると、借主が変わる場合は、家主が鍵交換と交換費用を負担するのが妥当であり、それを義務とする法規制や整備も必要ではないかと考えています。

構成・文/藤井 空(そら) ユンブル  監修/穂積啓子 写真/shutterstock