ある大御所マンガ家の伝説にインスパイアされた神回
――では、連載を長く続ける秘訣はありますか?
長く続けることに関していえば、一番大事なのは健康だと思います。腰痛で入院したことがあるので、筋トレと水泳はずっと続けていますね。
あとマンガは1話目が全てなところがあると思っているのですが、僕は本当に1話目を作るのが下手で、「ジャンプ」で始まる作品の1話目は必ず読むようにしています。
少し前になりますが、『僕のヒーローアカデミア』はすげえなと思いました。あんなの描けないですよ。
自分的にやれることは全てやって、これは完璧だと思っているのは『太平天国演義』。ただ、出来がいいと思った作品ほど反響がないんですよね。
――ご自身の作品の中で、特に思い入れのあるエピソードはありますか?
集英社には、「ある大御所マンガ家さんが一度提出した原稿を思うところがあって全て描き直した」という伝説があって、その話が大好きなんです。
それが頭にあって、『ONE OUTS』でマリナーズ戦を描いている時、ネームを早めにあげて鹿児島に帰省したことがあるんです。
実家で荷物を整理していたら、たまたま僕が生まれた日の前日の新聞が保存してあって、その一面が当時の阪急ブレーブスが試合を放棄したってニュースだったんです。それを見た瞬間、「これだ!」と思ってすぐに編集に電話しました。そこで、一旦出したネームを全部描き直したんです。
――おぉ! 『ONE OUTS』の話が出ましたが、主人公の渡久地や『LIAR GAME』の秋山、最新作『カモネギ』の加茂教授など、先生の作品には頭の切れるキャラクターが多いイメージです。キャラクターはどうやって作ることが多いですか?
おそらくですけど、周りのマンガ家さんの作品を見ると、この人そのものだよねってキャラクターを作る人と、憧れの対象としてキャラクターを作る人に分かれると思うんです。
僕は完全に後者ですね。