落語を題材にした文系スポ根マンガ

今も昔も人気の“スポ根”というマンガのジャンルがある。スポーツ根性マンガの略で、多くのマンガ好きが共通理解できるテーマだ。筆者はそんなスポ根マンガが大好物である。

競技や分野に努力と根性で向き合い、挫折、修行、ライバルとの勝負を繰り返し、頂(いただき)を目指す。読めばワクワクし、胸がアツくなる。近年ではこのスポ根フォーマットで、アート、文筆、学問といった非スポーツの“文系”ジャンルを描いた作品も多い。

本作『あかね噺』は落語を題材にした文系スポ根マンガである。

落語はその身ひとつで観客を楽しませるミニマムかつ究極のエンタメ。落語家たちがしのぎを削るその世界に、強い思いを抱いて飛び込んだ少女がいた。彼女の名は“あかね”こと桜咲 朱音(おうさき あかね)、まだ17歳の女子高校生である――。

集英社の漫画賞「ストキンPro」で準キングを受賞した末永裕樹氏が原作を、スポ根サッカーマンガ『オレゴラッソ』を連載した馬上鷹将氏が作画をそれぞれ担当。そしてマンガ好きを公言している落語家・林家けい木氏が監修している。このチームがつくりあげる本作の熱は着実に読者に伝わっており、単行本の1巻は発売後、即重版が決定した。本稿ではこの1巻を中心に、作品のアツさを未読の皆さんにも紹介したい。