日本における「報道の自由」の現在地
「国境なき記者団」による世界報道自由度ランキングが71位にまで転落し、原因の一つである総理大臣記者会見の閉鎖性に疑問を呈する記事を筆者が集英社オンラインに寄稿したのは今年5月末。
「直近10年で新たに事前登録が認められたフリーランス記者は0名」という異常な閉鎖性を問題視して、同会見に参加・質問できるのかを自ら体当たりリポートするという趣旨で始まったのが、このシリーズ企画だ。
何年経っても参加も質問もできないまま企画倒れする結末も覚悟していたが、まさか僅か5ヶ月で当初のゴールである初質問へ辿り着くとは筆者も編集部も全く想像していなかった。
この5ヶ月間に総理大臣記者会見を通して筆者が体験した出来事を踏まえて日本の報道の自由の現在地を考えてみると、閉鎖的だった面もある一方、想像よりはマシだったと思える面も多々あった。
想像以上に閉鎖的だった面については、theletter「犬飼淳のニュースレター」で配信したリポートで詳述しているため、今回は「想像よりマシだった面」に焦点を当てて、可能な限りポジティブに、前向きに、事実を振り返りたい。
まず、私が総理大臣記者会見への参加条件を満たすために提出した署名記事(直近3ヶ月以内に各月1つ以上、総理や官邸に関する署名記事を加盟社で書くことが求められる)は以下3点であった。
なぜ君は総理会見に参加できないのか? 「報道自由度71位」という日本の異常な現実(5月31日公開)
インボイス導入の本当の狙いは「消費税20%超増税」への布石か?(6月23日公開)
なぜ君は総理会見に参加できないのか? 直近10年「新規登録0人」の異常性(7月7日公開)
タイトルからも明らかな通り、全てが政権に批判的な内容だ。しかも、このうちの2つは総理大臣記者会見の閉鎖性を批判する内容だ。つまり、総理大臣記者会見に参加するための根拠として、総理大臣記者会見を批判する記事を提出したわけだ。最初からケンカを売っていると解釈されても致し方ない。
しかし、官邸報道室はこのような記事を提出しても、参加資格として認めた。報道規制が本当に厳しい国であれば、政権に批判的な記事を書くジャーナリストは会見から完全に締め出す対応がとられることもあるが、幸い日本は現時点では流石にそこまでは堕ちていないことがこの事実からハッキリと分かる。