最強軍団の天敵は“投手・大谷”

ワールドシリーズは“最強軍団”アストロズと、それを追い掛けるように進化し続けるフィリーズとの戦いになる。メジャー最強ともいえるアストロズ投手陣と、空気を読まない理不尽な一発のあるフィリーズ“KY打線”との対決が見物だ。

アストロズ投手陣は高めのストレートを有効活用し、スラッター、スプリット、スィーパーを重力による自由落下程度に落として空振りを狙うのが定石。シーズン中から、相手チームがマネして高めのストレートを投げてきたら、そのボールを意図的に狙って粉砕し、ここまで勝ち上がってきた。

対するフィリーズ打線は、ストライクゾーン高め3分の1の打撃成績がアストロズに次ぐメジャー2位。アストロズ投手陣は高めストレートを有効活用するため、打たれるリスクは高まるが、いかにソロホームランですますかがカギとなる。低めに落とすボールや横の変化球をいつも以上に駆使するはずだ。

さて、ここまで順風満帆なシーズンを過ごしてきたアストロズだが、レギュラーシーズンで唯一苦しめられた“天敵”がいる。それが投手・大谷翔平。今季は5試合、29.2回、45奪三振、4失点、防御率1.21と完璧に抑え込まれている。それはなぜか?

高めのストレート、斜めに曲がり落ちるスラッターという典型的なメジャーリーグの投球スタイルにきっちりと対応するアストロズ打線だが、大谷はこれらに加えて、左に大きく曲がりながら吹き上がるスィーパー、右に大きく曲がりながら沈む2シームを装備。

ストレート、スラッター、スプリットという縦の変化に加えて、スィーパーと2シームという横の変化も併せ持つ大谷に、アストロズ打線はまったく対応できなかった。

アストロズもスィーパーを投げられる投手は投げていて、ランス・マッカラーズ・ジュニアのように大谷型の横の投球スタイルの投手も増やしてはいるが、なんといっても今季後半戦の大谷はメジャーで1、2を争うピッチングをしていたわけで……。

アストロズ打線を抑えるカギは投手・大谷スタイルにあるが、大谷のようなピッチャーはメジャーでも数人なので、あまり参考にならないかもしれない。

文/お股ニキ 写真/AFLO