アストロズ救援陣を支える“藤浪晋太郎”

アストロズは特に投手陣が洗練されている。今季のチーム防御率2.90はドジャースに次いで30球団中2位だが、アストロズのほうが奪三振数は多く、被本塁打数も少ないため、短期決戦の強さにおいてはメジャーNo.1といっても過言ではない。

先発もリリーフも総じてハイレベル。そこに、サイ・ヤング賞最有力候補の大エース、ジャスティン・バーランダーが君臨する。2年前にトミー・ジョン手術を受け、今季完全復活。パワーピッチながら老獪な投球術を駆使し、大谷翔平をしのぐ投球成績を残すベテラン右腕だ。日本で12球団トップのチーム防御率を誇った阪神投手陣に、2年連続で沢村賞を受賞した山本由伸がいるイメージだろうか。

また、今季は主に中継ぎとして活躍しながら、抑えとしても14セーブをあげているラファエル・モンテーロは、ポスティングによる今オフのメジャー挑戦を公表している阪神・藤浪晋太郎にタイプがそっくりな投手だ。アストロズ移籍前はくすぶっていたが、アストロズ移籍後に才能が開花。藤浪よりも制球はいいが、球種や球質、フォーム、間合いが瓜ふたつ。ちなみに、藤浪のほうが14cmも身長が高い。

アストロズは投手育成の方法論を世界一知り尽くしているチームだ。オーバースローはバーランダーが完成形だが、伸びるライジング系のストレート、速く大きく強く曲がるパワーカーブ、もっとも空振りが取れて制球もしやすい中間球のスラッター系のボール(スライダー、カットボール)、フォークかチェンジアップの落ち球を理論通りに兼ね備えた投手を集め、育成している。

カーブのスピンがいいのにうまく使いこなせていない投手を獲得し、投スライダー系のボールの投げ方を仕込む“魔改造”をほどこしたりもしている。データを活用し、理論上の最適解となる数値を把握したうえで、すべての投手が変化量や球速、スピンの角度まで細かくプログラミングしているような感覚だ。

打線も悪くない。ドジャースやヤンキースのような派手さはないが、チャンスで強く、ここいちばんで仕事のできる選手がそろっている。四球が多く、三振が少ないのも特徴的。主砲のマイケル・ブラントリーを故障で欠き、最近は四球で出塁しないとなかなか得点が生まれない状態なのが若干気がかりではあるが。

超長距離砲はヨルダン・アルバレスくらいで、村上宗隆のように爆発的に打てるホームランバッターはいないが、2010年の千葉ロッテマリーンズのように「3割・20本・100打点」クラスの洗練されたバッティングをする選手がズラリと並ぶ。各選手が相手のスキを常に狙っていて、効率よく得点を生むことができる。