会心の走りができていないラストイヤー

出雲は直前に体調不良という明らかな要因があったが、実は今年度に入ってから田澤はなかなか会心のレースを見せられずにいた。

「疲労が抜けきれていないのか、自分が万全な状態で走れたのは、金栗(金栗記念選抜陸上中長距離大会)以降はないんですよね。そこから体調を崩しちゃったりしているので……」

シーズン初戦となった4月9日の金栗記念選抜は5000mに出場し、東京国際大の留学生、イェゴン・ヴェンセント(4年)と競り合いながら、13分22秒60の自己ベスト記録をマークしている。

駒大エース・田澤廉がラストイヤーに直面する逆境。駅伝三冠に求められる完全復活_2
金栗記念選抜で田澤は自己ベストをマーク
駒大エース・田澤廉がラストイヤーに直面する逆境。駅伝三冠に求められる完全復活_3
東京国際大のイェゴン・ヴェンセント(左)と話す田澤

東京五輪5000m代表の坂東悠汰(富士通)、リオデジャネイロ五輪に3000m障害で出場した塩尻和也(富士通)といった実績のある選手も出場していたが、「自分は負けない。日本人トップを獲るのは当たり前だと思っていた」と自信をもって臨んでいた。そして「本職ではない」という5000mで、堂々と日本人トップの5位に入った。

しかし、上々のシーズンインを迎えたかと思いきや、その勢いを維持することができなかった。

オレゴン世界選手権の切符がかかった5月の日本選手権10000mは10位に終わり、前年の2位から大きく順位を落とし、即内定とはならなかった。

その後、追加で日本代表となったものの、初めての世界選手権でも辛酸をなめた。田澤の実力をもってすれば決してついていけないペースではなかったはずだが、終盤の勝負どころを前に振り落とされてしまい20位に終わっている。

そもそも、昨年度は10000mのレースで、トップランナーの証とされる27分台のタイムを安定してマークしていたが、今年度はまだ27分台に届いていない。