少年院や刑務所より厳しい「日常」が存在する

一時代前の不良タイプの少年たちは、ヒツジの皮をかぶってでも1日でも早く少年院を出たいと思っていた。更生するにせよ、しないにせよ、独力で生き抜く気概と自信があったのだろう。

だが、今の子供はそうではない。生きるための力を育ませてもらえなかったことで、社会で生きることそのものに恐怖心を抱いているのだ。だから、そこでまた苦しい思いをするくらいなら、毎日3食もらえて、安心して眠ることのできる少年院の方が居心地がいいと考えるのである。

高齢の受刑者の中には、軽犯罪をくり返して刑務所暮らしをしている人間がいる。

若い頃は社会で働くことができても、年を取ってそれが難しくなった時、ホームレスをするより、刑務所の方が生きやすいと考え、出所しても無銭飲食や万引きをして数日で捕まり、もどってくるのだ。

現在、少年院で暮らしたいという少年たちは、そうした高齢の世代とは少し異なる。彼らは若い頃から人とつながれない、働けない、生きることに意義を見い出せないといった問題を抱えている。だからこそ、家にいるより、少年院にいる方が楽だと感じるのだ。

日本社会には、少年院や刑務所より厳しい「日常」が存在する。あるいは障がいや病理によって、過大に苦しさを感じ取る人がいる。加害者を取り締まるだけでなく、そうした日常や特性に目を向けて予防策を講じていかなければ、犯罪が減ることはないだろう。

取材・文/石井光太