現代の非行少年に共通する2つの傾向
近年、少年院にいる若者のタイプが昔と違ってきていることをご存じだろうか。
20~30年前は暴走族やカラーギャングなど、いわゆるヤンキーと呼ばれるような不良タイプの少年たちがほとんどだった。彼らは家庭の問題などによって道をそれ、暴走族など地元の不良グループに入り、鬱屈とした感情を暴力という形で社会に対してぶつけていた。校内暴力、暴走、かつあげ、抗争といった非行はその象徴だった。
他方、現在、少年院にいる子供たちの大半はまったく異なる。家庭で虐待を受けたり、不適切な環境に置かれたりして、自己否定感を膨らますところまでは同じだが、不良になって他者を傷つけるのではなく、不登校、自傷、ネット依存といった形で自分を傷つける行動をする傾向にある。
こうした若者たちは社会性が身につかず、他者とのかかわりを絶っているので認知がどんどんゆがんでいく。それゆえ、思春期になった時に、簡単に悪い大人に騙されて特殊詐欺や売春に加担させられたり、感情の爆発を抑えられず人に人に危害を加えたりすることがある。
現代の非行少年に共通するのは次の2つだ。
① 社会の中に家庭を含めて安心できる居場所がない。
② 人間関係を構築し、社会で生きていく力が非常に弱い。
以前、私は『虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか』(平凡社新書)を出した。その時の取材から1つ実例を紹介したい。