虐待を隠蔽するために小2で通学禁止
山本豊成(仮名)は父子家庭で育った一人っ子だった。居酒屋を営んでいた父親は、アルコール依存で、毎日のように豊成に暴力をふるっていた。何度も骨折させられたため、指や片腕の肘が変形したほどだ。
父親は小学2年生の頃から虐待を隠すために豊成に学校への通学を禁じた。学校には「息子がひきこもった」と説明し、本人には家で家事や店の仕事を無理やりやらせたのだ。
毎日店の掃除から皿洗いまでやらされ、家に帰れば理由もなく殴る蹴るの暴行を受ける。豊成は地獄のような日々から逃げ出そうと、度々脱走を図ったり、自殺未遂をしたりした。だが、いずれも失敗に終わり、父親から制裁として激しい暴行を受けた。
15歳のある日、豊成は仕事中にミスをして父親から叱りつけられた。彼の脳裏によぎったのは、次のようなことだった。
——このままじゃ、家に帰った途端に殺される。
そう考えると、恐怖でいても立ってもいられなくなった。そして豊成は父親から逃れたいという一心で、居酒屋の入っているビルのトイレに放火をした。警察に捕まれば、父親から逃げられると思ったのだ。
幸い、消防車がすぐに来て、トイレのある階だけで火は消し止められたが、放火の罪によって彼は少年院へ入れられることが決まった。