「恋愛や結婚はコスパが悪い」
また、昨今気になっているのは「恋愛や結婚はコスパが悪い」という若年層からの言葉です。セックスはしたいけれど、それまでに連絡先を聞いて、デートをして、時間をかけて口説いて……というのが面倒くさいしお金と時間の浪費、という考え方です。
これは、性愛に対して損得や打算の価値観を持ち込むことからきているように感じてなりません。つまり射精道における「義・勇・仁・礼」が存在していない証左であると感じています。
恋愛やセックスは、いわば究極の対人関係・コミュニケーションです。相手を選べばインスタントに済ますことは可能かもしれませんが、それは恋愛の本質とは遠いものです。本来の性愛は、それこそ時間をかけ、心を砕いて、セックスに至るための準備をしようとする気持ちがあってこそ豊かな営みになりうると思うのです。
一方、逆に気を使いすぎ、相手に対する礼儀が形式的なものになってしまうことがあります。あまり気分がのっていないのに相手が望んでいるからと、儀礼的な愛撫をしたり、あまり気持ちがいいと思っていないのに感じているふりをしてしまったり……といったことがそれにあたります。
そうした演技をしても、心が入っていなければ、かえって失礼にあたります。「礼」を裏付け、その中身を充実させるのは「誠」であると、新渡戸稲造は言いました。つまり、いくら相手を思いやるものであっても、嘘はつかないことが大切である、ということです。
相手に対してだけでなく、「義・勇・仁・礼」をもって自分自身の性欲に正直になるということも、同じくらい大切なことなのです。そしてそのバランス感覚、塩梅が大事なのです。