四皇との激闘も記憶にあたらしい、未来の〝海賊王〟モンキー・D・ルフィ。
その彼が新世界を飛び出し……集英社ビルで会社案内をしている!?
にわかには信じがたい内容が、2022年3月24日のプレスリリースで明かされた。
『ONE PIECE』のルフィが「AIルフィ」となって受付業務をおこなう実証実験を開始
リリースを出したのは集英社ではなくセコム株式会社。あの警備会社の、だ。
さらに株式会社ディー・エヌ・エーとも、東映アニメーション株式会社とも組んでいる実験???
聞いただけではよくわからず、ルフィでなくとも「ふーん。不思議実験か」と、聞き流してしまいそうというのが正直なところだ。
そんな折、関係者へ向けた【AIルフィ】の説明会が開かれるという情報を得た。
こんなおもしろそうなものを、わからないままにしておくのももったいない。
さっそく集英社オンライン編集部と筆者は、AIルフィの待つ集英社神保町3丁目ビルへ向かった。
まず〝AIルフィ〟の凄さを体感してみる
いた。
集英社のロビーに、高さ2mほどの大きな箱に収まったルフィが、いる。
耳に馴染んだあの声で「こっちに来いよ!」と手を振っている。
………
これは我々にしゃべりかけているのか?
誘われるがまま近づき、ルフィとコンタクトをとってみる。
仲間のこと、集英社のこと、そして週刊少年ジャンプ編集部のこと。
実験と銘打った段階でもかなりのセリフをマスターしていて驚いた。
さらに感動したのは、ルフィが目を見て喋ってくれることだ。
映像ではなかなか伝わらないが、この「ルフィと会話している」という感覚は、『ONE PIECE』という作品と長年関わってきた筆者でも味わったことのない新鮮味があった。
集英社のAIルフィ担当者に尋ねると、こういうことらしい。
・本体に一番近い人に目線が合うように作られている。
・一番近い人が離れると、次に近い人を探して目を合わせる。
・マイクは指向性を持っていて、正面の狭い範囲を拾うよう設定されている。
・なので周囲が多少騒がしくても目の前の人間の声を認識してくれる。
・音声は合成。アニメの音声素材と、田中真弓さんの新規収録分とを合わせてAIルフィの元となる音声を作成。
・それをAIを用いた合成技術で、音声を自動生成している。
・発言内容はあらかじめセットしたセリフを喋らせている。
・質問された内容に入っているキーワードを認識して、セットした内容からAIが選択する。
ざっくりまとめると
「設定された質問にしか反応できないが、その返しは自然体のルフィそのもの」
ということである。
事前収録した映像を流しているわけでなく、あくまでAIの合成技術の賜物。
すごい。
本当にすごいことだが……。
ルフィに受付させるための超技術って、どうしてそんなことしてるの!?
という大きな疑問が頭をもたげてきた。