連合に配慮し、新潟県知事選は自主投票へ

こうした連合と自民の蜜月ぶりが目立つなか、にわかに注目を集めているのが新潟県知事選(5月12日告示、29日投開票)だ。

旧運輸省時代に二階俊博運輸大臣の秘書官を務め、自民との繋がりが深い現職の花角英世(はなずみ・ひでよ)知事に連合が早々に推薦(その後、花角陣営の要請で支援に変更)を出したのだ。この動きの背景に「立憲が独自に知事候補を出すことはない」という連合の読みがあったのはまちがいない。

ただ、3月17日になって波乱が。脱原発を訴える市民団体代表の片桐奈保美氏が出馬を表明したのだ。しかも、共産と社民から推薦を受ける片桐氏は旧知の立憲・西村智奈美幹事長や、立憲・菊田真紀子新潟県連会長、さらには40年来の友人である森ゆうこ参院幹事長らに立憲県連としても推薦を出すように求めてきた。

そのため、3月21日に新潟市で開かれた立憲の県連会合は荒れに荒れた。その中心にいたのは次の参院選で改選を迎える森参院幹事長だった。

「それぞれがやればいいじゃないか。連合がどうとか、がんじがらめになっている」

そんな森参院幹事長の怒声が会場の外まで響き、会合は1時間半以上も紛糾した。そこで菊田新潟県連会長が議論を引き取る形で、「推薦願いが出ていた片桐さんについては立憲新潟県連としては推薦しない。しかし、応援したいという人も相当数いることから自主投票とする」と結論を出し、ようやく閉会にこぎつけたという。

自主投票の理由について、菊田新潟県連会長は「連合との関係もあるし、総合的な判断により自主投票として決意した」と説明する。

すでに花角知事を推薦していた連合新潟の牧野茂夫会長は「知事選に際し、立憲民主党県連が今後どのように動くかは参議院選挙に大きく影響する」と公言している。だからこそ、立憲の「新潟3姉妹」と呼ばれる西村幹事長、菊田県連会長、森参院幹事長は最大の支援団体の意向を無視できなかった。5月の県知事選よりも7月の参院選で森氏の当選、参院選3連覇を重視したというわけだ。

ちなみに16年参院選は森氏(無元・56万429票)が中原八一氏(自民現・55万8150票)に競り勝ち、19年参院選は打越さく良氏(無新・52万1717票)が塚田一郎氏(自現・47万9050票)を相手に当選を決めている。いずれの選挙も連合労組の支援票が野党勝利に大きく貢献したことは言うまでもない。

花角知事に挑む片桐氏は住宅メーカー副社長で、新潟経済同友会副代表幹事なども務め、リベラル層だけでなく、新潟財界や県内の保守層にも一定の影響力を持っている。また、柏崎刈羽原発の再稼働反対や脱原発を訴える市民団体「新潟の新しい未来を考える会」の会長を務めていることもあって、脱原発を訴える小泉純一郎元首相が応援のために4月10日に新潟入りをすることが決まっている。

さらに脱原発派の古賀茂明氏や飯田哲也氏、湯川れい子氏らといった面々も片桐氏を迎えて新潟県内で大規模な反原発集会を開く予定だ。

ロシア軍によるウクライナ原発攻撃で、あらためて原発の安全対策やエネルギー安全保障のあり方が争点として浮上している。そのため5月の新潟県知事選は与野党の勢力争いだけでなく、安易に原発再稼働に走ってよいのかどうかも問われる注目の選挙となりそうだ。