稼いだお金を自由に使えるのは結婚するまで

さらにもう一つ、自己資本にお金を使うという観点でも20代からiDeCoを利用するのは、あまりオススメしません。

あなたは自分という労働資本を持った資本家でもあります。あなたの労働でお金を生み出した資金をどう使うかは資本家であるあなたが決めるわけです。

投資をする場合、株式のインデックスを買うのか、自分に投資してさらに稼ぐ能力を磨くのかという2択です。リカレント教育という言葉があるとおり、近年ではいくつになっても学ぶことが重要な時代において、20代から自分にお金を使えないのは少し残念なことです。

労働人口が減るのに、移民を受け入れない日本人は老齢者になっても働き続けるというのがメインシナリオでしょう。長く働く人生において人的資本を高めて苦痛の少ない仕事を手にすることも幸福な人生において重要な要素ではないでしょうか。

またiDeCoで選択できる投資信託はインデックスファンドが中心です。インデックス投資では長く続けて投資資産が2倍になる程度です。ちなみに72を利回りで割ると2倍になる年数がわかります。

利回りが6%なら12年ということです。株式の実質リターンはおおよそ5〜6%と言われているので、どれだけリスクを取ってもiDeCoでは限界があります。これがインデックス投資が「入金力ゲーム」と言われる理由です。

言い換えると若いときに稼ぐ力を増やして、入金力を上げてから投資すればいいということです。

また時間は有限ですので、どれだけ自己投資をしたくても時間が足りなくなってきます。そうなると、自分に使えない資金は金融資本への投資に回っていきます。

あなたが結婚や子供を望んでいる場合、将来的にあなたが稼ぐお金はあなただけのものではなくなっていきます。自分の人生を振り返っても、自分の稼いだお金を誰の目も気にすることなく使えたのは結婚するまででした。

まとめると、
「若い時は経験に使った方がお金から得る効用が大きい」
「自由に使えるのは結婚まで」
という2点から、20代からiDeCoをすることをオススメしません。

iDeCoは一度拠出すると原則60歳までは引き出しができません。とりあえず貯蓄する、とりあえず投資をするというのは、とても立派で(簡単な)選択ですが、それが自分の人生において良き選択かどうかはまた別物です。

もし、あなたが20代、30代前半なら60歳までお金を引き出せないiDeCoを本当に今から始めるべきか慎重に考えるべきでしょう。

文/井上ヨウスケ