作品部門受賞作で見逃せない3作

手っ取り早く、今どんな作品が評価されているのかを知りたいという方は、簡単なコメントとともに各部門の作品賞を挙げておくので、これ気になる!という作品をチェックしてみてほしい。


作品賞受賞作(賞の対象となっているのは最新シーズン)

『メディア王〜華麗なる一族〜』U-NEXT 

登場人物全員クソ野郎、クセになる中年ギャグ、特権階級への痛烈な皮肉…絶対にハマるエミー賞作品部門ドラマ3選_2
シェイクスピアの『リア王』をモチーフに作られた。右から巨大メディア帝国を築いた父ローガン(ブライアン・コックス)と、シーズン3で反旗を翻す次男ケンダル(ジェレミー・ストロング)
Capital Pictures/amanaimages

現実の複数のメディア王を参考にした巨大メディア複合企業の、熾烈な家督争い。白人特権階級の傲慢を、これでもか!と胃が締め付けられるようなギスギスとした空気や乾いた笑いと共に描く。全員がクソ野郎の富豪一族を、ブライアン・コックス、ジェレミー・ストロング、キーラン・カルキンらが嬉々として演じる様子は、見ていて鳥肌もの。才人ジェレミー・アームストロングの脚本が冴え渡る、最高に俗っぽいのにシェイクスピア劇のような重みがずしりと胸に響く映像世界は圧巻だ。

『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』Apple TV+

登場人物全員クソ野郎、クセになる中年ギャグ、特権階級への痛烈な皮肉…絶対にハマるエミー賞作品部門ドラマ3選_3
企画・製作・主演を務めるのは、コメディアンのジェイソン・サダイキス
Capital Pictures/amanaimages

アメフトのコーチだったテッド・ラッソが、イギリスへ渡り経験のないサッカーの監督に転身。チームの立て直しに奮闘する。中年男性のベタなギャグに最初は腰が引けるも、次第にそのベタさがクセになる。ばかばかしい笑いでコーティングしながら、セルフケアの重要性に気付かされる展開は、まさに今の時代にぴったり。ちなみに筆者の個人的な体験に基づく感想だが、この種の一見地味な作風で日本になじみのないコメディアン主体のコメディシリーズほど、日本の媒体で紹介するチャンスがないのは残念なことだ。

『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』U-NEXT

登場人物全員クソ野郎、クセになる中年ギャグ、特権階級への痛烈な皮肉…絶対にハマるエミー賞作品部門ドラマ3選_4
ハワイの高級リゾートホテル「ホワイト・ロータス」を舞台に、訪れる客や従業員の複雑な事情をシュールに描く。ホテルの支配人アーモンドを演じるのはマーレイ・バートレット(右)
Everett Collection/アフロ

近年、最も充実しているカテゴリーと思われるリミテッド/アンソロジー・シリーズの覇者も、『メディア王』とテイストは異なるが、白人富裕層を題材にした風刺ドラマだ。ハワイにあるリゾートホテルを舞台に、3組の客の実情が雄大かつ美しいリゾート地の自然との対比と共に描かれる。芸達者ぞろいの優良作。白人の特権階級として生きることは罪なのか?といった問いをめぐる痛烈な皮肉は、今のハリウッドの流行りと言えそうだ。



文/今祥枝

後編はこちら