皮剥ぎと臭み取りに大苦戦

持ち帰る前に、超重要な血抜きをする。サメの体内には尿素が大量に含まれており、サメの死後、微生物によってアンモニアに分解され、臭みの元になってしまう。なので、まだ息があるうちに、血は抜けるだけ抜いておいたほうがいいのだ。エラにナイフを入れて血管に傷をつけて、逆さまにして頭のほうへ血を集めて、10分ほど宙吊りにした。あとは内臓を抜いて、身をぶつ切りにしてクーラーボックスに入れ、みんなで分配して持ち帰った。

調理で大変だったのは、皮を剥ぐ工程だ。サメ肌という言葉があるが、その名の通りサメの皮はとにかく頑丈だ。普通の魚は、外側から包丁を入れればすんなり刃が通るのだが、サメは外側がヤスリのようになっているので、一旦刃を刺して内側から裂くようにしないと切れない。包丁の切れ味をゴリゴリ落としているのを感じながら、なんとか3枚におろした。

フカヒレの表面の皮もなかなか剥がれなかった。フカヒレに熱湯をかけて、スプーンで擦れば皮が取れるはず……はずなのに、全っ然取れない。熱湯をかけるだけじゃ足りないので、画面外でちょっとゆでたが、それでも硬い皮を剥ぐのに3時間ほどかかってしまった。

その後の調理も長時間にわたるもので、フカヒレを干物にして、それを水に戻して、さらに煮込んで、という工程に全部で5日間くらいかかった。動画を撮っていなかったら普通に諦あきらめていたかもしれない。

延べ30時間の乾燥を経て、水に戻すとやっとフカヒレになった。乾燥させるのは、水分と共にアンモニアを飛ばすことで臭みを消すという理由がある。それを30時間やっても尚、フカヒレからは若干のアンモニア臭がした。

煮込む段階でも臭みを取り除のぞくためにネギとショウガを用意し、出汁用の鶏ガラといっしょに煮込んだ。煮詰まったところで、鶏ガラとネギを取り出し、しょうゆを入れた。ここまでくると急激に高級中華の匂いがしてきて、眠い目が覚めた。タケノコを入れ、片栗粉でとろみをつけて完成。

食べてみると、本当に「フカヒレ」だった。お店のフカヒレと比べると違うかもしれないが、たとえるならめちゃくちゃ美味い弾力のあるキクラゲ。場所によっては店のフカヒレのように柔らかい部分もあった。