ただし、須江監督や選手たちが執念を燃やした大阪桐蔭は準々決勝で下関国際に敗れ、横綱と戦わずしての戴冠だった。彼らにとって次の挑戦は、「大阪桐蔭を破っての日本一」なのではないか。
幸い大阪桐蔭には2年生ながら実質エース格の前田悠伍が残り、今夏ベンチに入れなかった1、2年生にも中学時代にその名を轟かせた好素材がひしめいている。一方の仙台育英もセンターラインを中心に今夏のレギュラーが残り、大化けが期待できる最速147キロ左腕・仁田陽翔という大器も控える。
また、仙台育英と同じ東北地方には佐々木麟太郎(花巻東)という超大物もいる。仙台育英の周辺を中心に、今後も高校野球界はますます盛り上がりそうだ。
夏の甲子園が始まって107年、優勝旗はやっと白河の関を超えて東北に初めてもたらされた。その重い扉 を開いた仙台育英は、次なる「日本一からの招待」を受けるべく前進し続ける。そして須江航という稀代の野球人がどんな風を野球界に吹かせていくのか、これからも見守り続けたい。
文/菊地高弘
甲子園を終えてー優勝・仙台育英監督に感動のスピーチをさせた11年前の大震災での決意
「青春って、とっても密なので」「全国の高校生に拍手を」。夏の甲子園で優勝した仙台育英・須江航監督のスピーチは多くの人々を感動させた。しかし彼が生徒に寄り添ったのは、あのときが初めてではない。11年前から交流があるスポーツライターの菊地高弘氏が書く。
「日本一に招かれた」優勝だった