「自分の顔がようやく好きになってきた」

出演作史上最高の“かわいさ”。ブラッド・ピットが年を重ねても色褪せない理由_04
REX/アフロ
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また『ブレット・トレイン』にはブラッド自身を投影したとしか思えないセリフがある。

「オレは若い頃の自分の顔が大嫌いだった。いま、ようやく好きになってきたよ」

若い頃は、そのハンサムなルックスばかりが取り上げられ、そういう役ばかりを当てられてきたという忸怩たる思いがあったのだろう。「今の顔が好き」というのなら、今の自分の人生に満足しているともとれる。

実のところ、彼にはプロデューサーというもうひとつの顔があり、自身のプロダクション<PLAN B>ではアカデミー作品賞を受賞した『それでも夜は明ける』(2013)や『ムーンライト』(2016)等をプロデュースし、世界に向けて素晴らしい映画を発信し続けている。だからなのか、彼はこういう発言もしている。

「みんなにわかってほしいのは、映画の主役は誰かということ。役者なんかじゃなく、監督というストーリーテラーなんだ。彼らはもっとも興味深い人々で、僕は彼らに尊敬の念と深い愛情を感じている」

プロデューサー業が好きなのも、尊敬する才人たちの夢を叶える手伝いができるからなのだろう。そして、かつて「映画をもっともっと探求したい。その深淵たる部分に触れたいといつも思っている」と語っていたブラッドは、その探求の方法をプロデューサーというやり方で極めようとしているのかもしれない。

ということはつまり、役者として映画に関わるのは、ビジネスはさておき、面白そうな作品、やってみたいキャラクターだけでいいということになる。だからこそ、演技に余裕が生まれ、その余裕がキュートさを生んでいるんだと思う。
最高にかわいいブラッドが拝める『ブレット・トレイン』を、ぜひその目で確かめてほしい。

文/渡辺麻紀

『ブレット・トレイン』(2022) Bullet Train 上映時間:2時間6分/アメリカ
運の悪い殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)は、依頼人のマリア(サンドラ・ブロック)から、ブリーフケースを盗むだけの簡単な仕事を請け負い、東京発・京都行の超高速列車に乗り込む。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを逸してしまう。

9月1日(木)より全国公開
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテイメント
公式サイト:https://www.bullettrain-movie.jp

ブラッド・ピット
1963年12月18日、アメリカ・オクラホマ州生まれ、ミズーリ州出身。1988年に『リック』で映画初主演。『テルマ&ルイーズ』(1991)『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)などで注目を集め、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)や『セブン』(1995)のヒットで世界的スターに。『12モンキーズ』(1995)『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)『マネーボール』(2011)でアカデミー賞にノミネートされ、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)でアカデミー助演男優賞に輝いた。プロデューサーとしても活動し、『ツリー・オブ・ライフ』(2011)『マネー・ボール』(2011)『それでも夜は明ける』(2013)『ムーンライト』(2016)『グローリー/明日への行進』(2014)『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)『Okja/オクジャ』(2017)などは高く評価されている。