元妻アンジーもメロメロだったブラッドの魅力
いや、考えてみればブラッドはいつもかわいかった。めざとい人は『テルマ&ルイーズ』(1991)のチンピラ役から目をつけていたが、『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)の眩しい笑顔、『スパイ・ゲーム』(2001)の子犬系キャラクター、『オーシャンズ11』(2001)でのジャンクフードの食べ方、見事、アカデミー助演男優賞に輝いた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)の頼もしいスタントマン役だって、誰もが認めるハンサムくんでありながら、同時にかわいらしくもあった。
美貌は年齢の積み重ねとともに色褪せる場合が多いが、彼の場合、かわいらしさの比重が大きいために、色褪せる速度が鈍化しているのではないかと思ってしまうほどだ。
実際の本人もかなりチャーミングな印象だ。筆者は何度かインタビューの機会があったが、『リバー・ランズ・スルー・イット』でブレイクして以来、ずっとハリウッドのトップを走り続けているのに、スレたような感じ、傲慢さがまるでない。言葉の数々にちゃんと本音と真実を感じる取ることができるし、映画への愛もいっぱいだった。
アンジェリーナ・ジョリーとの恋愛が始まった頃から、ほぼ単独のインタビューを受けなくなったように思うが、おそらくそれも、ふたりの関係への質問に対し、適当な言葉を並べてかわすだけのスキルや処世術をもっていないからだと、(勝手に)解釈している。数えきれないほどのインタビューや取材を受けて来たはずなのに、そこだけは上達しなかったと思ってしまう。
そんなブラッドについて、自身の監督作『リバー・ランズ〜』で彼を起用し、『スパイ・ゲーム』で共演したロバート・レッドフォードは「ブラッドとは久々に『スパイ・ゲーム』で一緒に仕事をしたが、もっとも驚いたのは『リバー・ランズ〜』のときとほとんど変わっていなかったところ。このビジネスにおいて、自分をずっと保っておくというのは非常に難しい。とりわけブラッドほどの成功を収めてしまうとだ。これは何を意味しているかといえば、彼は努力をしているということだよ」。そして「だから、彼との仕事はとても楽しかった」と語ったのだ。
さらに、離婚してしまったが、アンジーはパートナーだったときのブラッドを常に手放しで褒めていた。
「最高の伴侶」「三度目の正直で最高の男性と巡り合った」「文句ナシの素晴らしいパパ。彼の子どもたちへの愛情の深さを知ったときに、私は最高のパートナーを見つけたと確信したの」
結局は決別したものの、このアンジーの言葉もウソとは思えない。なぜなら彼女も「ウソがはびこるハリウッドで、せめて私だけは正直でいたい」という人だからだ。