古沼先生から聞いた「帝京魂」の本当の意味

――2試合を見て、決勝まで行く予感はしましたか。

青森山田戦での堂々としたプレーぶりから、もしかしたらベスト4くらいまでいくんじゃないかとは思いました。ただ、勝ち上がるかどうかということ以上に、インターハイは冬の選手権に向けて全国のレベルを知ることができるので、ものすごく価値のある経験が得られると思っていました。

今年のチームは守備にちょっと難があって、カウンターやセットプレーへの対応などに危ういところがあったんです。それでも青森山田に勝ち切って、準決勝の昌平戦ではクリーンシート(失点しないこと)ができた。大会を通してすごく選手が伸びてくれました。優勝は逃したけれど、成長率では大会ナンバーワンだったかもしれない。

「帝京魂」とは何か? 古豪復活でサッカー部OBが証言する“本当の意味”_02
森山泰行(もりやま・やすゆき) サッカー元日本代表FW。1969年、岐阜市生まれ。東京・帝京高、順天堂大を経て1992年に名古屋グランパスへ入団。1998年にはスロベニアの強豪ヒット・ゴリツァへ移籍。帰国後、広島、川崎、札幌などでもプレーし、J1でリーグ戦通算215試合出場66得点。2022年、なでしこリーグ1部の朝日インテック・ラブリッジ名古屋ストライカーコーチに就任。日本サッカー協会公認S級コーチ
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――今大会、終盤での得点や逆転もありました。「帝京魂」ですか?

それ、帝京魂の意味を履き違えているかもですね(笑)。卒業してかなり経ってから、古沼先生(古沼貞雄元監督)がこんなふうに言ってたんです。

「みんな簡単に“帝京魂”って使うけど、もともとは、ほかの人のことを考える気遣いを言うんだ。たとえば、次に使う人のために整理整頓をしておくとか、合宿所で風呂に垢が浮いていたらそれをすくっておくとか。それが帝京魂なんだ」って。

でも、帝京魂とか伝統とか、そんなことは今の選手にはあまり関係ないと思うんです。優勝など過去の実績はリスペクトしなくちゃいけないけど、それを選手たちが重荷に感じるようではいけない。今の選手が主役で一番大事ですから、OBとしてそこを気遣ってあげないといけない。それこそ帝京魂ですよ。