試合勝利だけでなく「ダブルゴール」を

――久しぶりにユニホームの星の数を増やせるところまできた印象ですが。

「かつて強かった学校ほど、OBが昔のことを持ち出して激励したりもするんですが、間違っても『このところ星が増やせていないじゃないか!』みたいなことを今の選手に言ってはダメだと思います。

9個目の星をつけた2002年インターハイ優勝の時には、まだ生まれていない子ばかりですよ。競技力の向上とともに、人間的な成長も目指す『ダブルゴール』が大事です。高校サッカーは勝利至上主義に走りやすいが、試合を100回やって100回勝てるチームなんてない。

もちろん勝利は目指すけど、負けたとしても自分の中で成長を感じたり、みんなから誇ってもらったりするような、価値のあるチームに成長してほしい。

高校サッカー界や教育界の状況が昔とは変わってきていることもあって、数年前にOB会とは別に、帝京サッカー部の『サポーターズ倶楽部』という組織ができたんです。純粋に選手たちを応援したいと思って、僕も今年4月に入れてもらいました。

――後輩たちにはどんなチームをつくってほしいですか。

日比監督が就任してから、しっかりボールを動かしてつないでいくということをやってきた。今回のインターハイは決勝で負けたけど、素晴らしい戦いぶりで成長してくれたので、結果としてダブルゴールが成立したと思ってます。

最近はもう、帝京という名前だけで選手が入学してくれる時代ではなくなっていたが、プリンスリーグ関東に上がったこともあって、Jリーグの下部組織で育った選手が選んでくれるようになってきた。たぶん今回のインターハイでの活躍で、さらにいいサイクルで回っていくだろうなと期待をしています。子供たちがのびのびとサッカーに集中できる環境を作るのがOBの役目だと思うので、見守っていきたいですね。

取材・文/松本行弘 写真/AFLO