ひろゆきのルーツ「匿名掲示板」の現在地
現在、「論破王」としてメディアの討論番組で活躍するひろゆきですが、その最初期の成功は「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」という匿名掲示板の創設でした。
「意見を言ったり議論を戦わせるときには、名前と顔を晒すべきだ」という現在も根強い考え方に逆らうように、名前を伏せて、もちろん顔も素性も伏せて書き込みをすることができる場所をインターネット上に作り出したのです。
この掲示板が誹謗中傷や人格攻撃、果てはさまざまな犯罪の温床にもなったことで、ひろゆきは複数の訴訟で巨額の賠償請求を受けています。
それにもかかわらず、ひろゆきは現在「2ちゃんねる」の英語圏版であり、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人にも就任しています。
匿名掲示板は、表現の自由を保障する場でもありますが、表現の自由が保障されたことで発信される情報は、ひとの心の闇を誘い、ときには大きな暴力へと結びつくことがあります。
公共の正義からは異端視される過激な思想をもつ12もの組織に潜入調査したルポ『ゴーイングダーク』は、「4chan」を含むさまざまなアンダーグラウンドな場で結びついた人々の姿を読者に教えてくれます。
ひろゆきは、匿名掲示板の管理人として訴訟を起こされ、多額の賠償金を踏み倒そうとしているとも言われています。その態度から、社会問題に無関心なのかと思われるかもしれませんが、表現の自由を尊重すること、国家権力からの圧力に抵抗する場所を作り維持することにはひと一倍まじめに向き合っているのかもしれません。
文/永田希