ひろゆきのベーシック・インカムの構想
終始一貫して親しげに語らう成毛との対談とは逆に、ピリつく場面があるのが竹中平蔵との対談。ひろゆきは、いきなり竹中の資産や金銭感覚を挑発的に揶揄し、竹中が「印象操作だ」と語気を強くしながら反論します。
しかし前半でのこのハラハラするやりとりによって、ふたりの隔壁が崩れたのか、後半ではひろゆきも竹中も賛同しているベーシック・インカムの構想について語り合い、日本の未来を支える経済基盤を構想します。
ひろゆきは「口喧嘩(ディベート)が得意な皮肉屋」というイメージを持たれがちです。そんなひろゆきが、「日本の未来」という大きな問題について、元閣僚で経済の専門家でもある竹中にプレゼンをし、批判を仰いでいるのです。他ではなかなか見られない本書の読みどころでしょう。
対談本では言及されていませんが、ひろゆきは東京都の団地地域で幼少期から少年期を過ごしています。都内とはいえ、ひろゆきが住んでいた場所は当時、生活保護家庭が多く、その時の経験がベーシック・インカム支持に繋がっているとも考えられます。
ベーシック・インカムは世界的に見ても導入例がほぼ存在せず、これから長い目で議論を積み重ねていく必要のあるテーマです。ベーシック・インカムに関心があって、もっと骨太な議論を読みたいと思っているけれどまだ手を出せていない、という読者に、本書は良い入門になるのかもしれません。
ひろゆき、成毛、竹中の3人は、強烈なキャラクターと極端な物言いがひとり歩きをしてしまう印象があります。ただ、彼らのバックグラウンドや価値観が今の世の中に大きな影響を与えていることは確かです。その是非は別途、検証の必要はあるでしょうが、彼らの価値観を知ることは「現代」を知ることと言えるはずです。