漢方薬という選択肢
「メンタルの調子が悪いが、できれば抗うつ薬には頼りたくない」という人は、医師に相談して漢方薬を処方してもらう方法も選択肢としてある。実際に亀廣先生のクリニックでも、積極的に漢方薬の処方を行っている。
「漢方薬は精神科や心療内科のみならず、内科や婦人科、小児科などでも処方可能で、保険適用の対象です。いわゆる一般的な薬の場合、頭痛にはこの薬、耳鳴りにはこの薬など、1つの薬の守備範囲はとても狭いものです。一方、漢方薬がベースとしている東洋医学では『心身一如』という考えがあり、一種類で一人ひとり違う心身のさまざまな症状・不調に作用するのが特徴です。
私のクリニックでは、初診の患者さんには時間をかけて漢方診察をし、その人に合った漢方薬を処方していますが、漢方薬は忙しい臨床現場では広く用いられていないというのが現状です。ひとつの方法として、漢方にくわしい医療機関を検索できるサイトなどを活用してみるのもいいかもしれません」
メンタル不調は自分を変えるきっかけにも
仕事でメンタルが落ち込んだとき、その状態からなかなか回復できないときは、自分自身の生活習慣や、ものごとへの捉え方を見直す良いきっかけにもなると亀廣先生は考えている。
「自分の生活習慣やマインドが変わり、健やかなメンタルを手に入れることができれば、これから長く働いていくうえで得をするのは自分自身ですよね。
精神科医は、オズの魔法使いに出てくる『オズ』のようなものと私は考えています。患者さんがもともと持っている力に気づかせてあげたり、それを引き出したりするのが本来の仕事。患者さんを見ていると、本当はすごい能力を持っているのにそこに気づいていない方も本当に多いんです。もっとご自身の力を信じて、大変でも自分と向き合って行動していくことが、こころの病の治癒や再発を防ぐことにつながるのではないでしょうか」