史上最大のジャイアントキリングは起こせるのか⁉

④聖秀学院 VS 海堂学園(『MAJOR』小学館)

横浜スタジアムで行われた神奈川県大会準々決勝。かつて自らが在籍した海堂学園に、新しく育て上げた聖秀学院のメンバーとして挑む茂野吾郎。エースの眉村健を温存し、吾郎を気にかける様子もない海堂学園だったが、試合は途中から雨中の決戦に。吾郎たち聖秀学院の粘りが、徐々に試合を均衡させていく。

「メジャー」は、茂野吾郎の成長物語であり、野球人としての一代記であるが、その野球人生は(特に若い頃は)苦難に満ちている。負け続けの人生と言ってもいい。だが、多くは自ら挑んだ苦難であり、望んだ挑戦でもある。

野球の超名門である海堂学園に入学し、地獄のような特訓にも耐えたにもかかわらず、あえて自分から学校を去り、打倒・海堂学園を掲げた吾郎。野球部のなかった聖秀学院に入り、ゼロから這い上がろうとする彼の反骨精神は、端から見れば無謀そのもの。彼の生き方を凝縮した試合であり、高校時代を象徴した一戦。海堂学園の壁は高く厚いが、果たして結果は吾郎に微笑んでくれるのか!?

負けてなお英雄。神奈川の象徴・不知火守が吠える!

⑤明訓 VS 白新(『大甲子園』秋田書店)

熱闘と言えば、絶対にハズせない白新・不知火守と、常勝・明訓ナインの戦い。地区大会で5度にわたってあいまみえた両者の戦いは正直、どの試合も熱いのだが、ここでは3年夏の神奈川県大会決勝を挙げた。

戦いを熱くしているのは、やはり不知火守の執念。山田太郎たちと同世代であったばかりに、全国で日の目を見ることができなかった男は、明訓に勝つことこそすべて、甲子園など関係ないというところまで覚悟を決めた。

不知火と明訓の対決で面白いところは、山田は不知火の超遅球が苦手だが、不知火は小技の利く殿馬が苦手といったジャンケンのような構造が内包されているところ。また、全国屈指の投手である不知火の、勝負に勝って試合に負けるはかなさも見どころのひとつだ。

ニコガクが総力戦で挑んだ、負けられない戦い

⑥二子玉川学園 VS 笹崎(『ROOKIES』集英社)

記憶に残る熱闘! 高校野球マンガ「あの地区大会決勝がスゴかった!」10選_2
©森田まさのり・スタジオヒットマン/集英社

笹崎のエース・川上は、二子玉川学園のエース・安仁屋恵壹と因縁浅からぬ仲。安仁屋が中学時代にいたチームは、川上にノーヒットノーランを達成されていたのである。その2人は東東京大会の3回戦で激突。序盤は川上を意識していた安仁屋だったが、試合の途中で自分の目的は川上を倒すことではなく、甲子園へ行くことだと気づいた安仁屋は、素直に非を認めて反省する。

割れんばかりのヤジ、血染めのボール、腫れ上がる打撲……と二子玉川学園を次々に襲う試練。試合は総力戦になっていく。作者の森田まさのりと言えば、シリアスの中に小さな笑いを放り込む手法が得意だが、この試合はシリアス要素が多め。

二子玉川学園の川藤幸一監督が、笹崎のベンチに抗議へ向かうシーンは胸熱。試合の途中に挟まれる、相手エース・川上が乗り越えた挫折と苦悩のエピソードも涙を誘う。