──若いのに周囲に流されず、自己主張する人だったんですね。

そのために音楽を勉強したし、洋楽とかもたくさん聴いてサウンドの方向性まで考えたっていうから、普通のアイドル歌手にはないタイプでした。

なのに「ミュージシャン・中森明菜」がまだ十分に評価されていないのは、やっぱり「少女A」や「1/2の神話」に代表される80年代前半のツッパリ路線が衝撃的すぎたから。

その流れで「DESIRE-情熱-」にいくんだけど、いつまでも「男にかしずかない不良っぽい女の子」って側面ばかり注目されてしまっているんですよね。

──ツッパリ要素が中森明菜の本質ではないと……。

彼女の本当のすごさは独自の世界観を作ったこと。特に80年代後半の「ジプシー・クイーン」や「SOLITUDE」といった、ツッパリでも演歌でもない都会派歌謡の世界観を作った功績は大きいです。

これを僕は“アーバン歌謡”って勝手に呼んでいるんだけど(笑)、イメージ的にはふわっとしたソバージュヘアで元麻布のマンションに住んでいるみたいな女性を主人公にした感じの。当時、都会の独身女性の疲労感を表現するなんて誰もやっていなかった。独自の世界観です。

さらに「SAND BEIGE-砂漠へ-」とか「TANGO NOIR」とかは異国情緒もあって、東京に軸足を置きながら世界旅行といいますか。さまざまな曲を見事に歌いこなしながら、どれを歌っても“中森明菜”になるってとこは唯一無二。

だからこそ、そういった彼女の音楽性があまり総括されていないのは残念。もっと振り返っていい部分だと思います。

──それって、ここ5年くらい本人が表舞台に出ないせいもあります?

あるでしょうね。伝説の世界に閉じ込められている気がします。野球選手でもレジェンドって言い方をされて、勝手に神棚に祀られている人がいます。本当はもっとすごいのに、その評価がぼやかされちゃってて。ミュージシャンだと中森明菜はそのひとりだと思います。