昨シーズンの激闘を振り返る

––昨シーズンは最終節まで優勝・降格争いが繰り広げられる大接戦でした。

優勝チームと降格チーム、そしてUEFAチャンピオンズリーズ、UEFAヨーロッパリーグ、UEFAヨーロッパ・カンファレンスリーグといったコンペティションの出場チームが最終節まで決まらなかったのは、実は1992年にプレミアが創設されてから初めてのことで。「最後の最後まで決着がつかなかった」という意味では、非常にエキサイティングなシーズンでした。

––特にマンチェスター・シティ(以下、シティ)とリバプールの優勝争いには、白熱したファンも多いと思います。

1位のシティと2位のリバプールの勝ち点差が、最終的に1ポイント。シーズン通して38試合やって、たったの1ポイント差ですよ。シティは29勝6分3敗 で、リバプールは28勝8分2敗と、実はリバプールの方が負けは少ないんです。そして総得点数はシティが99得点、リバプールが94得点。総失点数は同じ26。どこかの試合でリバプールが1試合でも勝っていたら、全部ひっくり返っていたんです。それほどギリギリの戦いというか、世界最高レベルのぶつかり合いでした。

マンチェスターシティとリバプールの「2強時代」はどこまで続くのか?_2
昨シーズン、リバプールとの激闘を制し、チャンピオンとなったマンチェスター・シティ(出典元:John B Hewitt / Shutterstock.com)

––現在のシティとリバプールは、世界中のサッカーファンから注目される2チームかと思います。昨シーズンの両チームの印象をお聞かせください。

昨シーズンのシティに関しては、「明確なストライカー(=9番)」がいないチームでした。年明けのある時期まで2桁得点を取る選手が誰もいませんでしたが、一方で複数の選手が7〜9点取っていて。明確なストライカーはいないんだけど、いろいろな選手がそのポジションに入りながらゴールを決め、最終的にチームとして99得点取って、優勝する。点の取り方に関してもいろいろなバリエーションがありましたし、やはり、チームとして大変魅力的だなと感じました。

リバプールに関しては、DFフィルジル・ファン・ダイクが前シーズンの負傷から戻ってきたことが一番大きいトピックでした。ある意味、一番の“補強”だったと言えると思います。結果的にチャンピオンズリーグでもほとんど負けることなく決勝まで進みましたし、ひと言で言えば、シーズン通して「とんでもなく強かったな」と。

私は「シティがリバプール化して、リバプールがシティ化している」とよく表現しているのですが、シティにジョゼップ・グアルディオラ監督、リバプールにユルゲン・クロップ監督が就任してから、この2クラブはお互いをライバル視して、影響し合って、進化してきているんですね。カウンターのイメージが強いリバプールも、実は今だと平均ボール保持率は6割を超えていて。逆に、これまでポゼッションスタイルが持ち味だったシティは、どんどん攻撃が加速してきていて、カウンターもすごく意識している。お互いの良いところをそれぞれが取り入れることで、パフォーマンスレベルを高め合っているんです。

マンチェスターシティとリバプールの「2強時代」はどこまで続くのか?_3
わずか1ポイント差で優勝を逃すものの、圧倒的な強さを見せつけたリバプール(出典元:ph.FAB / Shutterstock.com)

––ほかのチームはいかがでしょう? まずはチェルシーとアーセナルに関してお伺いできますか。

チェルシーは、英国政府による制裁の件もありますが、新加入のFWロメル・ルカクがあまりフィットしませんでした。やはりトーマス・トゥヘル監督のチームには、どっしり構える「9番」タイプは合わなかった、というのが私の見解です。トゥヘル監督のチームって、「掴みどころのなさ」が持ち味なんですよ。「何をしようとしているのか、把握しづらい」というのが、今のチェルシーの強みなんです。前線の選手もかなり流動性があり、ショートカウンターやロングカウンターもできて、攻撃のバリエーションもある。そこにルカクが入ったときに、そういった動きが出づらくなってしまった印象です。

アーセナルは、最後に勝ち点を多く取り逃がしてしまったなぁと。残念ながらチャンピオンズリーグへの出場権は逃してしまいましたが、一方で着実に選手の入れ替えが行われています。日本代表・冨安健洋選手をはじめ、マルティン・ウーデゴール、ブカヨ・サカ、エディ・エンケティア、エミール・スミス=ロウ…選手の平均年齢が下がり、パフォーマンスに若干の波はあるものの、チームとしてすごく躍動したシーズンを過ごせたと思います。

––BIG 6の残りの2チーム、マンチェスター・ユナイテッドとトッテナムはいかがでしょう?

マンチェスター・ユナイテッドに関しては、残念ながら「失敗のシーズン」と言えるかもしれません。シーズン途中にラルフ・ラングニック氏が暫定監督として招聘されて、私はかなり期待していたのですが、パフォーマンスがなかなか向上せず。得点と失点が57点と、同一なんですよね。失敗のシーズンでプレミア6位を取れるのはすごいことではありますが、マンチェスター・ユナイテッドというビッグクラブとして考えると、やはり物足りない結果だと思います。

一方トッテナムは、4位フィニッシュでチャンピオンズリーグ出場権獲得と、健闘しました。シーズン開幕戦でシティに勝利しましたが、当時のヌーノ・エスピーリト・サント監督は特徴的なことをやっていて、それが上手くハマっていない印象で。シーズン途中でアントニオ・コンテ監督に交代し、その後、うまくチャンピオンズリーグ圏内に滑り込んだなと思います。