ノスタルジックな天井「電気湯カラー」は偶然の産物?

電気湯といえば、浴室の高い天井に描かれた鮮やかな色のラインが象徴的だ。黄色・白・水色で書かれたこのラインは「電気湯カラー」とも呼ばれ、お客さんから親しまれている。

国連のスーパーエリートが下町銭湯へとコンバート!?  東京都・墨田区の人情銭湯「電気湯」_5
高い天井には黄色・白・水色のライン、通称「電気湯カラー」が鮮やかに描かれる

「天井は、3.11の震災前はもっとシンプルな色だった気がするんです。震災の影響で壁のモザイクタイルが全部落ちちゃったので、パネルを張って絵を描いてもらって。浴室内部の改修をしたんですけど、その時に天井に色がついたはず。僕の幼少期の記憶だと、全くこの色の印象はなくって、継いだ後にこんな色だったっけ!?ってなりました(笑)。」

今ではすっかり電気湯を象徴する色となっており、手拭いなどのオリジナルグッズにも使われている。窓から差し込む光が天井のラインを照らす様がなんともノスタルジックで、お風呂に浸かりながら、天井を見上げるのが通な人の楽しみ方だ。

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男湯の赤富士は日本に2人しかいないと言われる銭湯絵師の中島盛夫さんが手掛けたもの

「魔女の宅急便」の世界観を銭湯で

下町ならではのお客さんとの交流も電気湯の魅力の一つ。

「バイトの子はみんな近所に住んでいるんで、日常生活でご近所付き合いしているんですよ。バイトで電気湯に向かう途中に『今日は番台かい?』って声かけられるみたいな、ジブリ映画の『魔女の宅急便』のようなコミュニケーションがあるんですよ。」

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番台の中川さんは主に昼間の時間帯を担当する。開店前の下準備にも余念がない。途中で若手のバイトメンバーへとバトンタッチ

電気湯の近所には長屋や一軒家が多く立ち並び、昔からの習慣で、家にいる時にはドアを開けっぱなしにしているところも多い。近所付き合いでは、そうして空いている家を覗き込んで、会話をしに行くという交流がなされているようで、同じように電気湯を覗いて、中には差し入れを持ってきて番台と話をしていくお客さんもいる。


「うちみたいな銭湯って本当にスタンダードで、空間がデカくてお風呂があってサウナがあって…なので番台の人柄によって人気度って左右されるんですよ。そういう交流ができる人がバイトメンバーとして集まっているんで、それを維持し続けるというのは大事にしていますし、みんなにも言い聞かせています」。


店主の大久保さんだけではなく、番台に立つバイトメンバーこそ、地域に根付いていくような存在になってほしいという大久保さんの想いもあり、電気湯のSNSでも写真と共にスタッフの紹介をしている。「電気湯の裏にいるいろんな人の顔を見てほしい」と思う背景には、地域でのコミュニケーションを大事にする電気湯の目指す姿があった。

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ロビーにおいてあるノートには、お客さんからの感想が寄せられている