ロサンゼルス市警史上最悪の汚職事件が関連

映画を理解する上で需要なもうひとつの出来事が、ロサンゼルス市警史上最悪の汚職事件と呼ばれている「ランパート・スキャンダル」。1998年、ロサンゼルス市警ランパート署のラファエル・ペレズ巡査が、証拠品として保管されているコカインを盗み出したことが発覚。後に行われた裁判で、70人以上の警官が麻薬取引や窃盗、暴力行為、証拠隠滅などの不正行為に関与していたことが発覚した。今もなおその全容はわかっておらず、多くの事件は未解決のまま。ビギーの事件も、実はこれらに深く関わりがあることが『L.A.コールドケース』で描かれている。

呂布カルマ絶賛。伝説のラッパー殺人事件を描く『L.A.コールドケース』_4
作中に登場する汚職警官
© 2018 Good Films Enterprises, LLC.

「映画の中に出てくる汚職警官が“警察も結局、人の集まりだ”みたいな、低いレベルの真理をついていて、怖いなって感じましたね。アメリカって見た目がギャングみたいな人たちも普通に医者とか警察官とかの職業についていたりするけど、この映画に登場する警官は、実際にやっていることがゴリゴリのギャング。家に捜査が入っても全然うろたえないし、ふてぶてしい態度だから、その肝の据わり方はなんなんだ?って思いました」

そんな腐敗した組織に身を置きながらも(後に退職)、命をかけて真実を解明しようとしたラッセル・プールという実在の人物がいたこと。その人物を、ジョニー・デップが演じていることも見どころだ。

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「ジョニー・デップが出ているだけで“ガチの映画だ”って感じましたね。ただ、プールはもちろん、記者のジャックもすごくヒーローのように見えるけど、本当にそうだったのかなって。純粋な正義感とは違うと思いました。国中が注目する未解決事件を俺が解決してやるんだっていう、ある意味ハイになっている部分があった気がします。自分がもしも彼らの立場だったら、あそこまではやらないと思う。だって自分ごとじゃないですから」

HIPHOPをテーマにした映画としても、クライム・サスペンスとしても見応えのある本作。未解決事件の真相に鋭く切り込んだ衝撃の内容は、ぜひ映画館で目撃してほしい。

「たくさんの悪者が登場する中で、自分が一番ワクワクしたのはシュグ・ナイト(デス・ロウ・レコードの創設者)の存在。実際の彼はまだ生きていて、殺人容疑で服役中なんですけど、『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)とか、当時のアメリカのHIPHOP界隈を描いた映画には必ず出てくるめちゃくちゃ悪い人なんです。登場するだけでワクワクするし、圧倒的巨悪って、やっぱ物語には重要。『L.A.コールドケース』でもしっかり描かれているので、HIPHOP好きの仲間には見てほしいです」

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呂布カルマ
りょふかるま

名古屋JET CITY PEOPLE代表。プロラッパーでグラビアディガー。
「若い頃はギャスパー・ノエ監督の映画とかが好きでしたけど、30歳をすぎてからは『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)みたいなド派手な映画が好きになりました。一番好きな映画は『バーフバリ 伝説誕生』(2015)。昔から好きな俳優はニコラス・ケイジ。憂を帯びた目が好き」

Twitter:https://twitter.com/Yakamashiwa
YouTube:https://www.youtube.com/user/AZZHOUSE

『L.A.コールドケース』(2018)City of Lies 上映時間:1時間52分/アメリカ・イギリス

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元ロサンゼルス市警のラッセル・プール(ジョニー・デップ)は、1997年に発生した“ノトーリアス・B.I.G.”の射殺事件から18年経った今も、未解決事件の真相をひとりで追い続けていた。独自に事件を探っていた記者のジャック・ジャクソン(フォレスト・ウィテカー)は、プールのもとを訪ねて過去の手掛かりを一緒に究明することになる。やがてふたりの前に浮かび上がってきたのは、予想もしない新事実だった……。

8月5日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、グランドシネマサンシャイン 池袋
他全国順次公開
配給:キノフィルムズ
公式HP:https://la-coldcase.jp/
© 2018 Good Films Enterprises, LLC.

取材・文/松山梢