「戦争は教室から始まる」

MBSは、投開票日の翌日、夕方の情報ワイド番組「よんチャンTV」のコメンテーターに橋下徹氏を起用し、選挙結果の解説をすることが決まっています。

新春の政治的公平性が問われたバラエティー番組の放送がありながら、どのような議論を重ねてこうなったのか。視聴者からはどう見えるだろうかと今からとても危惧します。

「既存政党を否定し、大衆を引きつける」、これが2010年誕生当初からの維新の会の手法でした。今も改革保守を掲げ、敵とみなした相手をひっぱたくような振る舞いもその特徴です。

人びとを引きつける手段のひとつとして教育改革に手をつけていったと言っても過言ではありません。既存政党を否定して支持を得ようとする参政党も同じ政治手法の道を歩もうとしているかのようです。

最近、政治や権力の怖さを感じられない人がテレビメディアに増えているのではないか。MBS報道に育てられた私はそうは思いたくないのですが、視聴率競争やネットのPV競争に現を抜かしている場合ではないのです。

人びとの政治不信の渦の中、扇動や挑発を繰り返す政治に流されて報道の軸を失ったら、それは政党政治や社会全体の破壊に繋がり、自殺行為であることを意識しなくてはいけないと感じます。平穏な暮らしが殺されかけているのではないかと疑いの目を向けることも。

教育への政治介入に異議申し立てを続けた大阪府教育委員長の故・生野照子さんの言葉――相手が政治でやってきたら政治でないと返せないんですー-が頭の中でリフレインします。

「戦争は教室から始まる」、こう語り続ける97歳の元教員が『教育と愛国』を観てくれました。戦前のあの時代と重なると感想が届きました。

「鬼畜米英、敵はアメリカとイギリスだ」と教わり、国策のしもべとなった公教育を受けて20歳で敗戦を迎えた先生が生涯をかけて訴えること、それは教室から戦争を始めることができるということです。

教育に政治が忍び寄る深刻な状況に対し、政治と対峙した生野さんは「周囲が本気で怒らなかった。それが怖い」と繰り返しました。怒りや批判は、政治の劣化へのブレーキ役です。

悔しいと涙してくれた教員志望の女性の純粋さを、私は忘れられません。『教育と愛国』を語り、行動する方たちの存在が一筋の希望になっています。今、はっきりこう言いたい。教育と子どもたちを道具にする恐れのある政治家と政党には1票たりとも投じません。一票を投じるべきは、権力を決して暴走させないと過去の歴史と真摯に向き合う政治です。

異例のヒット映画『教育と愛国』の監督が今、伝えたいこと_2
2017年度ギャラクシー賞を・大賞を受賞した話題作
追加取材を加えついに映画化!

「教育と愛国」
監督斉加尚代
プロデューサー澤田隆三、奥田信幸
語り 井浦新

公式サイトhttps://www.mbs.jp/kyoiku-aikoku/

全国で絶賛公開中!

何が記者を殺すのか
大阪発ドキュメンタリーの現場から
斉加 尚代
異例のヒット映画『教育と愛国』の監督が今、伝えたいこと_3
2022年4月15日発売
1,034円(税込)
新書判/304ページ
ISBN:978-4-08-721210-5
久米宏氏、推薦!
いま地方発のドキュメンタリー番組が熱い。
中でも、沖縄の基地問題、教科書問題、ネット上でのバッシングなどのテーマに正面から取り組み、維新旋風吹き荒れる大阪の地で孤軍奮闘しているテレビドキュメンタリストの存在が注目を集めている。
本書は、毎日放送の制作番組『なぜペンをとるのか』『沖縄 さまよう木霊』『教育と愛国』『バッシング』などの問題作の取材舞台裏を明かし、ヘイトやデマが飛び交う日本社会に警鐘を鳴らしつつ、深刻な危機に陥っている報道の在り方を問う。
企画編集協力はノンフィクションライターの木村元彦。
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