研究開発部門の仕事はベンチャーを買収すること

東証一部に上場している某大手健康食品メーカーの話で驚いたことがあります。新製品のプロモーションを請け負った業者が、製品についての詳細なデータを問い合わせたところ、回答が来るまで1週間以上待たされたそうです。この会社は社内に研究開発部門を持っていますから、本来であればすぐに回答できるはずなのですが。

不思議に思ってよくよく聞いてみると、じつはこのメーカーの研究開発部門は、もはや開発を行なっていないというのです。だったらなにをやっているのかというと、創薬ベンチャーの買収です。

実はその大手メーカーは、ベンチャー企業が開発する新製品をひたすらウォッチして、有望そうなものを見つけたら買収するか専属契約を結んで、ドラッグストアやコンビニなどこれまで開拓してきた販路に乗せて販売するというビジネスをやっていました。「メーカー」と名乗りつつも研究開発部門は空洞化しており、これではたんなる営業代行です。そのためデータを問い合わせると、いちいち開発元に照会しなければならないのでものすごく時間がかかるのです。

なぜこんなバカバカしいことになるかというと、終身雇用の日本の会社はタコツボ化していて、いったん悪い評判が立つとそれが定年までついてまわるからです。こうした環境で生き延びるための最適戦略は、いっさいリスクをとらずにひたすら失敗を避けることです。